今日という日に抱擁を


【詳細】

比率:男1:女1

現代・ラブストーリー

時間:5分~8分


【あらすじ】

夜。

スマホとにらめっこをする久美。

彼女には今日という日にやりたいことがあるようで……


【登場人物】

久美:誠の彼女。

   今日という日にかこつけてやりたいことがあるらしい。


誠 :久美の彼氏。

   久美のことが大切で仕方ない 



●リビング・夜

   お風呂上がりの久美がスマホとにらめっこしている。


久美:う~ん……いや、ダメだよな……でも……

誠 :ん? どうした?

久美:うわっ!

誠 :え?

久美:なんだ、いたの?

誠 :いたよ?

久美:いつから?

誠 :ついさっき。お風呂あがったから

久美:そっか、おかえり~

誠 :ただいま。それで、何がダメなの?

久美:へ? な、なんのこと?

誠 :なにって……さっきスマホ見ながら、「ダメだよな……」って呟いてたじゃん

久美:あぁ……そうだっけ?

誠 :そうだよ

久美:誠の気のせいじゃない?

誠 :気のせいじゃない

久美:……

誠 :(何かに気が付いて言いづらそうに)あぁ、久美……?

久美:な、何?

誠 :もしかして……

久美:もしかして?

誠 :太った?

久美:は?

誠 :あ、いや、ごめん! こんなこと言うもんじゃないよね。あぁ、でも、俺は大丈夫だと思うよ! うん、俺は久美のこと太ってるとは思ってないし! だから、久美が今何を食べたいのかはわからないけど、もし我慢できなくて食べたいものがあるなら食べればいいと思うし!

久美:え? 誠?

誠 :その後のこと気になるなら、一緒に運動するし!

久美:(小さく)……誠……

誠 :あ、それよりも一緒に食べに行く? 半分こにしたらカロリーとか気にならないでしょ!

久美:誠!

誠 :は、はい!

久美:そうじゃないから!

誠 :え?

久美:私が悩んでたのは、体重云々の問題じゃないの!

誠 :そうなの

久美:そう! っていうか、太ったって思ってたんだ?

誠 :違うって! そんなこと断じて思ってないから! ただ、女の子が悩むっていったら、それかなって思っただけで!

久美:……ふ~ん

誠 :でも、それじゃないとしたら……あ、どこか遊びに行く予定?

久美:はい?

誠 :最近暑い日続くから俺としては出来るだけ涼しい所にいてほしいんだけど……ほら、久美って油断して熱中症とかなるからさ

久美:……その節は、ご迷惑をおかけしました

誠 :迷惑なんて思わないけど、本当に心配したんだよ? 急に連絡来たときは生きた心地がしなかった……

久美:そんな、大袈裟な……

誠 :大袈裟なんかじゃないよ! 熱中症とか脱水症で大変なことになる人だっているって毎年ニュースで言ってるでしょ!

久美:確かに……

誠 :でしょ! なので、今度からは気を付けてください! ちゃんと、こまめに水分と塩分の補給ね!

久美:……はい

誠 :わかればよろしい! それで?

久美:え?

誠 :どこに行きたいの?

久美:え?

誠 :え?

久美:どこにも行かないよ?

誠 :あれ?

久美:いや、行かないって

誠 :だって……あれ?

久美:私が悩んでたのはそういうことでもじゃなくて……

誠 :なくて?

久美:うぅ……

誠 :なくて?

久美:……はめたな?

誠 :(微笑んで)なんのことだろ? さ、ここまで来たら言っちゃえば?

久美:……言わなきゃダメ?

誠 :俺は聞きたいな?

久美:……

誠 :く~み~?

久美:……今日って、何の日か知ってる?

誠 :今日?

久美:うん

誠 :八月九日……何かあったっけ? 記念日ではないのは確かに……

久美:……今日ってハグの日なんだって……

誠 :ハグの日?

久美:そう。八月の九日でハグ

誠 :あぁ~! 語呂合わせ!

久美:そう

誠 :それで?

久美:……その……えっと……

誠 :(微笑んで)久美は俺とハグしたいなって思ってくれたと……

久美:っ!

誠 :もう、可愛いな~

久美:可愛くない!

誠 :可愛い! そんな語呂合わせにかこつけなくていつでもぎゅーってするのに

久美:……それは……

誠 :実際、してるし。でしょ?

久美:それはそうなんだけど……

誠 :あ、そっか!

久美:え?

誠 :たまには久美から言ってくれようとしてたとか?

久美:……うるさい!

誠 :(微笑んで)ごめんごめん。じゃあ……

久美:でもね!

誠 :ん?

久美:でも、今日って、ハグの日なだけじゃないじゃん……

誠 :え?

久美:今日ってさ、忘れちゃいけない日じゃん。一個人としても、歴史としても……

誠 :……そうだね

久美:だから、こんな浮かれていいのかなって……

誠 :……久美……

久美:……

誠 :久美。おいで

久美:え?

誠 :いいから、おいで

久美:……うん……

誠 :(優しく抱きしめて)久美は優しいね

久美:そんなこと……

誠 :優しいよ。でも、考えすぎ

久美:……

誠 :今日という日は確かに忘れちゃいけない日だけど、でも、だからって大切な人と好きって気持ちを共有しちゃいけない日じゃないでしょ?

久美:……うん……

誠 :俺はね、むしろ、ちゃんと好きって伝えなきゃって思うよ

久美:え?

誠 :明日っていう日が必ず来るなんて言えないから。『いつか』じゃなくて、『今』伝えないと

久美:……そうだね……

誠 :ねぇ、久美

久美:ん?

誠 :久美のこと、大好きだよ。ずっと可能な限り傍にいてください

久美:……ずっと一緒にいる。おばあちゃんになっても、幽霊になっても……

誠 :(クスリと笑って)幽霊になっても?

久美:……誠が寂しいこと言うから……馬鹿……

誠 :ごめん。俺もずっと一緒にいる。久美のことずっと抱きしめられる距離にいさせてください

久美:うん。誠……

誠 :ん?

久美:……大好きだよ


   二人、キスをする。



―幕―




2021.08.09 ボイコネにて投稿

2022.07.20 加筆修正・HP投稿

お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

紅く色づく季節

こちらは紅山楓のシナリオを投稿しております。 ご使用の際は、『シナリオの使用について』をお読みくださいませ。 どうぞ、よろしくお願いいたします!

0コメント

  • 1000 / 1000