【詳細】
比率:男1
日常・ラブストーリー
時間:約5分
【あらすじ】
仕事の都合で彼女と遠距離恋愛になって約半年。
仕事で疲れて帰ってきたあなたの元へ一通の手紙が届きます。
手紙の差出人は……
*こちらは、『大好きなあなたへ、素直になれない私の手紙』にと対となっております
こちらだけでもお読みいただけます
【登場人物】
俺:彼女と遠距離恋愛になって約半年の男性。
なかなか素直になれない彼女のことを大切に思っています。
俺:
「(ため息)今日も疲れたな……」
仕事から帰ってきて家の鍵を開ける。カシャンと寂しい音が響く
誰もいない部屋に向かって、ただいまを言う気にもなれずに無言のまま後ろ手で鍵を閉める
仕事の都合でこっちに引っ越してきて半年
誰もいない部屋なんて慣れているはずなのに、たまに急に寂しくなる
「子供かっての……」
我ながら苦笑が漏れる
いつもならこんなに重い気持ちにならないのに、今日はどうやら一か月に一度のダメな日のようだ
「こんな日はさっさと飯食って、風呂入って……」
カサッ
「ん?」
ドアを閉めた拍子で中のものが傾いたのか、新聞受けから紙がこすれる音がする
あぁ、今日は新聞取ってなかったなって思いつつ、そこを開けると、新聞と一緒に一通の手紙が落ちてきた
「手紙? 誰から……」
差出人の名前を確認しようと裏面を見ると、そこに記してあったのは大好きなあの子の名前だった
「なんだってまた……」
疑問に思うのと同時に頭の中を嫌な予感が駆け巡った
こういう手紙は大抵の場合、あまりよくないときに届くと相場が決まってる
でも、昨日だって連絡とってたし、そんな素振りは……
中に書いてあるであろう真実を知りたくて、俺は封を手で乱暴に開けた
急いで中から取り出した便箋は桜色で、どことなく、彼女の香りがするような気がして、何故か気持ちがストンと落ち着く
「拝啓、大好きなあなたへ……」
便箋には少しだけ癖のある、女性らしい丸文字で彼女の言葉が綴られていた
「……」
普段、彼女からは聞くことが出来ない言葉が便箋いっぱいに書いてあり、どうしていいかわからず言葉を失う
嬉しいことであっても言葉を失うなんてことがあるのかと、そんな感想が一瞬頭を過ったが、すぐに彼女の言葉たちに視線を戻す
こんな嬉しい言葉たち、彼女はどんな顔をして書いてくれたのだろうか
顔を真っ赤にしながらも丁寧に一文字一文字言葉綴る彼女を想像すると自然と口角が上がる
「支えてもらっているのは俺の方だよ……」
ふっと、口から洩れた言葉は自分のものとは思えないくらい柔らかいものだった
驚くよりも先に納得する
あぁ、やっぱり俺はあの子のことが大好きなんだと
いてもたってもいられなくなり鞄のスマホに手が伸びる
通話のボタンを押すとすぐに彼女に繋がった
少し驚いた声の君
「急に電話してくるなんてめずらしいね」ってちょっと心配されてしまった
それでもいい
それよりも今すぐに君に伝えたいことがあるんだ
「ねぇ、俺も大好きだよ」
―幕―
2021.03.02 ボイコネにて投稿
2022.08.16 加筆修正・HP投稿
お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)
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