【詳細】
比率:男1:女1
現代・学園もの・青春・ラブストーリー
時間:約10分
【あらすじ】
放課後の美術準備室。
せつなは思い立って美術教師の川田を訪ねます。
絵の具の匂いとゆったりと流れる大人な時間。
二人は何を思うのか……
*『知らないのは……』シリーズのお話です。
一話完結しておりますのでこちらだけでもお使いいただけます。
【登場人物】
せつな:松嶋 せつな(まつしま せつな)
高校生。
瞳のクラスメイト。
大人な雰囲気のお姉さん。年上の彼氏さんがいるらしい。
誠治:川田 誠治(かわだ せいじ)
美術教師。
普段は物腰柔らかで生徒から人気。
●構内・美術準備室・放課後
誠治が教材の片付けをしてる。
準備室のドアがノックされる。
誠治:はい、どうぞ
せつな:失礼します
誠治:松嶋さん、どうしたんですか?
せつな:ちょっと先生にご相談がありまして……
誠治:何でしょう? 松嶋さんが僕に相談に来てくれるなんて珍しいですね。もうすぐ試験ですし、何か技法で分からないことでも?
せつな:そうですね。もうすぐ試験期間になりますから、こうやって準備室にも入れなくなりますもんね
誠治:そうですね。試験期間中は立ち入り出来ないですからね
せつな:(にっこり微笑んで)だから来たんです
誠治:……
せつな:確か、美術部は今日から試験前の部活お休み期間ですよね?
誠治:はい
せつな:じゃあ、今日は先生を独占しても文句は言われないですよね?
誠治:松嶋さん
せつな:なんですか?
誠治:(素の声に戻り)……俺の言いたいこと、わかってるだろ?
せつな:もちろん
誠治:ここ学校だぞ
せつな:はい
誠治:学校では?
せつな:普通に一般生徒と同じように接すること
誠治:(小さくため息をつき)約束、覚えてたみたいで安心したよ
せつな:あら、私は約束を守ってますよ? 今回、先に破ったのは先生の方ですよね?
誠治:……
楽しそう笑うせつな。その表情をジッと見る誠治。
誠治:……何があった?
せつな:え?
誠治:お前が学校でこうやって来るなんて珍しいじゃねぇか
せつな:……
誠治:何かあったのか?
せつな:(にっこり笑って)いいえ
誠治:は?
せつな:これといって何もありません
誠治:……帰れ
せつな:あら、ひどい扱いですね
誠治:心配した俺がバカだった。だったら危険を冒してまでここに来んな
せつな:ご迷惑ですか?
誠治:あぁ
せつな:(少し俯き)……そうですか
誠治:何もないならな
せつな:……何もなかったわけじゃないんです
誠治:は?
せつな:先生はうちのクラスの佐竹さんと木田君ってわかります?
誠治:あぁ、いつもお前が話してる二人だろ?
せつな:あれ、私そんなに話してました?
誠治:……無自覚かよ
せつな:はい
誠治:いつも楽しそうな顔して話してるぞ
せつな:まぁ、二人といると楽しいですし
誠治:……そうかよ
せつな:先生?
誠治:で? そいつらがどうかしたのか?
せつな:佐竹さんが同じくうちのクラスの吉岡君と立花さんをくっつけようと必死なのもお話したことありましたよね?
誠治:あぁ、聞いたな。毎度毎度なんちゃら作戦って銘打っていらん世話焼いてるんだろ?
せつな:(クスクス笑って)木田君と同じこと言ってますね
誠治:(面白くなさげに)……で?
せつな:今日もそのなんちゃら作戦をやって失敗してまして
誠治:だろうな
せつな:あら、わかるんですか?
誠治:そりゃお前たち見てればな
せつな:その心は?
誠治:その心は?って見たまんまだろ。吉岡も立花もお互いにお互いを好きってわかってて、どっちが告白するか的な駆け引きやってるんだろ。だから外野があの手この手を使ってくっつけようとしても無駄だ
せつな:おぉ、流石、先生。伊達に先生はやってないってところですか?
誠治:これでもお前らより経験豊富なんでな
せつな:……
誠治:ん? どうした?
せつな:いえ……
誠治:それで、そいつらが何かあったのか?
せつな:いえ
誠治:じゃあ……
せつな:(微笑んで)見ていたらとても微笑ましくて、でも、何故か会いたくなっちゃいました
誠治:……
せつな:先生?
誠治:……おい、カギ閉めて来い
せつな:え?
誠治:いいから
せつな:え、でも……
誠治:バレそうになったらお前のことロッカーに隠す。ちょっと絵の具の匂いがするが、我慢しろ
せつな:いや、でも……
誠治、席を立ってせつなの脇を通り、扉の鍵を閉める。
せつな:先生!
誠治:何だ?
せつな:バレたら!
誠治:ここまで来といてか?
せつな:……
誠治:かまわねぇよ。そんな顔してるお前を放っておく方が無理
せつな:そんな顔って……
誠治:今にも泣きそうな顔してる
せつな:っ!
誠治:ほれ、こっちこい
誠治、せつなの腕を引っ張って抱きしめる。
せつな:先生!
誠治:誠治
せつな:え?
誠治:ほれ、いつもみたいに名前で呼べ
せつな:……
誠治:ほれ
せつな:……
誠治:(ため息)本当にそういうところは律儀なのな、せつな
せつな:あっ! 名前っ!
誠治:寂しい思いさせてごめんな
せつな:私は別に……
誠治:寂しい思いさせてるだろ。堂々と付き合っていることを公表出来ない、デートだって出来ない
せつな:それは、卒業するまで我慢です。そういう約束です
誠治:あぁ、そうだ。それが、俺たちが付き合える条件だ
せつな:だから……
誠治:でも、そんな必死になって我慢する必要なんかない
せつな:え?
誠治:俺はずるい大人なんだよ。ちょっとくらいのわがまま聞いてやれる
せつな:……
誠治:(ため息)
せつな:(誠治のため息にびくっとする)
誠治:あぁ、ごめん。せつなに対してのため息じゃないから
せつな:はい
誠治:……もっと早くこうすればよかったな
せつな:え?
誠治:我慢させて悪かった。お前のこと大人びているし理解力もあるから大丈夫だって思ってた
せつな:私は子どもです
誠治:いや、お前は大人だよ。そんなお前に俺が甘えてた
せつな:え?
誠治:馬鹿だよな~。俺さ、ちょっと考えてたんだ。やっぱりお前のこと大人としてふって、辛い思いをしなくて済む同年代と付き合えって言ってやるべきじゃないかって
せつな:私は!
誠治:最後まで聞けって。思ってたんだけど、やっぱり出来ないんだよ。お前のことが好きすぎて
せつな:……先生……
誠治:だからさ、これからも辛い思いさせると思うけど、卒業まで我慢してくれるか?
せつな:そんなの……
誠治:ん?
せつな:そんなの、当たり前じゃないですか!
誠治:(優しく微笑んで)ありがとう
せつな:私だって、不安だったんです!
誠治:(優しく)ん?
せつな:先生は大人で、だから私よりもっと魅力的な女性が周りにいて、私なんかいつか捨てられちゃうんじゃないかって……だから、必死で物分かりのいいふりをして、ずっと我慢して……
誠治:そうか、ごめんな
せつな:先生、私、先生の傍にいたいです!
誠治:あぁ、ずっといてくれ
せつな:(強く誠治に抱き着いて)先生!
誠治:せつな
せつな:……はい
誠治:愛してる
誠治、静かにせつなにキスをする。
―幕―
2020.10.15 ボイコネにて投稿
2023.04.12 加筆修正・HP投稿
お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)
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