朝焼けに


【詳細】

比率:性別不問1

現代

時間:約5分~7分



【あらすじ】

そろそろ寝るかと思った瞬間、スマホに届いた一通のメッセージ。

差出人はあの子。

らしくない距離感のメッセージ。

君は今何を思っているの?


*性別不問ですが、男性イメージで書かせていただいております

 違和感がある場合はご自由に語尾等を変更くださいませ


*こちらは『夜と朝の間にて』の別視点のお話でございます。



【登場人物】

俺:好きなことに夢中になりすぎて夜更かしをしてしまった人




俺:

「ふぁ~」


パソコンの画面から視線を外し、椅子の上で大きく伸びをする

ずっと集中していたせいだろう

肩も首もバキバキで軽くストレッチをするとパキパキと音を立てる


「もう若くはないってことか……」


自分の身体の現状に苦笑が漏れる

少しは自重しないといけないのかとも思うが

自分の性格上きっと無理なんだろなと思う今日の頃……


「さてと……ん?」


軽くシャワーでも浴びて寝ようかと思っていた矢先、デスクに置いてあったスマホが鳴る

短い通知音

何かのメッセージを受け取った音だ

同じくデスクに置いてある置時計を見て、こんな時間にいったい誰だと

自分のことを棚上げして悪態を付く


そこに表示されていたのはよく見慣れたアイコン

いつも一緒によく馬鹿をやっている仲間


『こんばんは』


らしくない距離感の挨拶

不思議に思いながらも挨拶を返す


『こんばんは』


なんかあったか、寝ぼけたか……

まぁ、返ってこなければそれはそれでいいことだ

こんな時間に起きてるなんて健康に悪い


「まぁ、他人を説教出来るほど立派な生活してないがな」


思ったことが自分にも刺さりまた苦笑が零れる


『ごめん、起こした?』


「え……起きてる」


返ってきたメッセージにもう一度時間を確認する

時刻は確かに夜と朝の間の時間を指していた

頭に疑問符が浮かぶ

とりあえず、返信するのがいい気がして言葉を返す


『んや、起きてた』

『起きてたの? この時間に?』

『それはそっくりそのままお返しするよ』

『私はたまたま目が覚めただけだから! 夜更かししてません!』

『さいですか』

『そうです!』


いつも通りの他愛のない会話

なんの変わりもない彼女

だからこそ、浮かぶ疑問


『で? どうした?』


遠回しに聞くのも違う気がして

いや、逃げられそうで

だからこそストレートに聞いた

さっきとは明らかに返信の速度が違う


『なにが?』

『いや、この時間にメッセージ送って来るなんて珍しいなって思ったから』


止まる入力のモーション表示

あぁ、これはどうやら図星らしい

さて、どうしたものか

素直に言葉にするのが苦手な君

他人の事は驚くくらい目ざとく変化に気付いて声をかけるのに

自分のことになるととんと見ぬふり、知らぬふり


これは難しいなぁと思いながら、画面からふと顔を上げると

そこには、綺麗な空があった 


『ねぇ、今、暇?』


気が付いたら、メッセージを送っていた


『暇って……まだ夜中だよ』


少し間をおいて返ってきたメッセージ

きっとそれを打つ君の顔は呆れているだろう


『もうすぐ朝だよ』

『ほんとだ』

『だろ? だから、話さない?』


「……なんて、少し強引すぎたかな……」


我ながらこういうことが本当に下手だなと思う

いい歳して、気の利いたことの一つも言えないとは……


『え?』

『こんな綺麗な時間、一人で味わうのはちょっともったいない気がしてさ』


でも、そんなのどうだっていい

反省なんて後でも出来る

今はただ、この端末の先にいる君を独りにしないこと

それが一番大事なんだ


『いいよ』


その数秒後、スマホが鳴る

今度は長く

あの子からの着信だ

一呼吸おいて画面をタップする

いつも通り、何気ない風を装って


「おはよう」



―幕―





2023.08.24 HP投稿

お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

紅く色づく季節

こちらは紅山楓のシナリオを投稿しております。 ご使用の際は、『シナリオの使用について』をお読みくださいませ。 どうぞ、よろしくお願いいたします!

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