かわいいだけじゃなくて……


【詳細】

比率:男1:女1

現代・ラブストーリー

時間:約10分



【あらすじ】

とあるカップルの日常です。

『かわいいのち大好き』の後日談でございます。

拓海と付き合いだして半年が経った今でも香奈は自分になかなか自信が持てなくて……



【登場人物】

香奈:(かな)

   20代。拓海の彼女。

   仕事が出来るのに自分自身には自信が持てません。


拓海:(たくみ)

   20代。香奈の彼氏。

   いつも強がる彼女に頼ってほしいと思っています。




●拓海の家

   ドアの前に香奈が立っている。


香奈:(ため息)ダメダメ……いつも通り、いつも通り……

拓海:香奈、何してるんだ?

香奈:きゃっ! た、拓海! なんでいるの!

拓海:なんでって……ここ、俺ん家だけど?

香奈:そ、そういう意味じゃなくて!

拓海:ん?

香奈:いや、なんで部屋にいないの?

拓海:あぁ、今日ちょっと仕事押したから。一応、連絡入れたんだけど?

香奈:え? あ、スマホ見てなかった……

拓海:まぁ、既読つかなかったから見てないんだろうなってのは分かってたよ


   拓海、鍵を開ける。


拓海:今日、忙しかったの?

香奈:う、うん。ちょっとね……

拓海:ふ~ん……

香奈:でも、拓海ほどじゃないよ!

拓海:そう。(ドアを抑えながら)どうぞ

香奈:ありがとう。お邪魔します

香奈、家に入る。

拓海:(ため息)

香奈:ん?

拓海:(ドアを閉めながら)そろそろ、お邪魔しますじゃないだろ?

香奈:え?

拓海:(後ろから香奈を抱きしめて)ただいまって言ってほしいところなんだけど?

香奈:いや、でも、ここ拓海の家だし

拓海:もう半分くらい香奈の家にもなってきてるだろ?

   香奈の物もいっぱい増えたし、この家に香奈が来ることも増えた

香奈:……はい

拓海:だったら、もうここも香奈の家だよね?

香奈:……はい

拓海:家に帰ったら?

香奈:……た、ただいま

拓海:うん、おかえり。ただいま

香奈:お、おかえり……

拓海:(楽しそうに笑う)

香奈:なによ!

拓海:いや、ただいまとおかえりを言うだけなのに照れるなんて、やっぱり香奈はかわいいなって

香奈:もう、知らない! ほら、ご飯作るから、先に手とか洗ってきて!


   香奈、キッチンへと入っていく。


拓海:本当にかわいいな。少しは調子戻ったかな…





●拓海の家・夕飯後


拓海:ごちそうさまでした

香奈:お粗末様でした

拓海:やっぱり、香奈の料理はおいしいな

香奈:そう? そう言ってもらえてなによりです

拓海:あ、食器は流しに置いといてくれたらいいよ。後で俺が洗うから

香奈:別にいいよ。今やっちゃう

拓海:いいから、そっちに食器置いてこっちに来て

香奈:う~ん、でも、拓海疲れてるでしょ? ササっとやっちゃうよ

拓海:いいから

香奈:でも……

拓海:香~奈?

香奈:……はい


   香奈、拓海のいるソファまで行く。


拓海:はい、クッション敷いて下に座って

香奈:え? 隣じゃなくて?

拓海:今日はこっち

香奈:ん? 分かった。よっと、これでいい?

拓海:うん。あ、今から肩触るから。くすぐったかったら言って

香奈:え? うん。なに? 肩もんでくれるの?

拓海:そう

香奈:ありがとう。後で私も拓海の肩やってあげるね

拓海:ありがとう。(肩をもむ)どう? 痛くない?

香奈:うん、大丈夫。気持ちいいよ。

拓海:そっか

香奈:うん、さすが拓海だね

拓海:なにが?

香奈:拓海はなんでも出来るねってこと

拓海:そうか?

香奈:うん、拓海はなんでも出来るよ。(小声で)それに比べて……

拓海:……

香奈:どう? こってるかな?

拓海:……こってるな

香奈:やっぱりかぁ。長時間のパソコンは……

拓海:(遮って)肩にずっと力が入りっぱなし、気も張りっぱなし

香奈:え?

拓海:ここはもう家だ。会社じゃないぞ?

香奈:拓海?

拓海:もう香奈が落ち込んでも、わがまま言っても、駄々をこねても怒る奴はいないし、軽蔑する奴もいない

香奈:……

拓海:(後ろから抱きしめて)何があった?

香奈:……っ……何もないよ……

拓海:じゃあ、何か言われた?

香奈:……別に、いつも通りだったよ?

拓海:香奈

香奈:……拓海の勘違いじゃないかな?

拓海:香奈、本当のこと言って

香奈:だから!

拓海:そう


   拓海、香奈を離す。


香奈:え……

拓海:じゃあ、いい。俺、洗い物してくる

香奈:っ!

拓海:なに? 手、放して?

香奈:……

拓海:俺の勘違いなんでしょ?

香奈:……っ……

拓海:なに? なんで泣いてるの?

香奈:……ご、ごめんなさい……

拓海:それは何に対して?

香奈:……拓海に、嘘つきました……だから……

拓海:うん

香奈:……ごめんなさい……嫌いにならないで……

拓海:(力強く香奈を抱きしめ)香奈

香奈:……っ……

拓海:大丈夫だよ、嫌いになんてならないから。ごめん、意地悪だったね

香奈:……拓海は悪くない……

拓海:ううん、意地悪だった。香奈の本音を聞きたかったんだ

香奈:うん……

拓海:会社でまた何かあった?

香奈:……うん

拓海:言いたくない?

香奈:……うん……

拓海:じゃあ、詳しくは聞かない。でも、俺のこと頼ってほしい

香奈:……うん……

拓海:一人でなんでも抱え込むなよ。俺ってそんなに頼りないか?

香奈:違う!

拓海:じゃあ、家に帰ってきてまで我慢するな。俺はどんな香奈でも好きだから、大丈夫だから

香奈:……うん

拓海:うん、じゃあ、今日はずっとこうしてようか

香奈:うん……拓海?

拓海:ん?

香奈:本当にごめんね

拓海:いいよ、俺も意地悪したから

香奈:でも……

拓海:じゃあ、お互いさまってことで

香奈:はい

拓海:あ~ぁ、付き合って初めての喧嘩で泣かせちゃうなんてな

香奈:ごめん

拓海:香奈が謝ることじゃないだろ? 怖かったよな?

香奈:……うん

拓海:ごめん、でもそれだけ俺は香奈のことを大事に思ってるってことだから

香奈:うん、拓海

拓海:ん?

香奈:いつもありがとう




―幕―





2020.08.14 ボイコネ投稿

2024.05.30 修正・HP投稿

お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

紅く色づく季節

こちらは紅山楓のシナリオを投稿しております。 ご使用の際は、『シナリオの使用について』をお読みくださいませ。 どうぞ、よろしくお願いいたします!

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