理想よりも


【詳細】

比率:男1:女1

現代・ラブストーリー

時間:約15分



【あらすじ】

自分の思い描いている『理想の恋人』ってなんですか?

自分が気になっている人が、自分の理想と違っていたらあなたはどうしますか?


こちらは、『かわいいシリーズ』の番外編でございます。

こちらのお話だけでも完結しておりますので単体でお使いいただけると思います。



【登場人物】

北山涼介:(きたやま りょうすけ)

     会社では常に明るいムードメーカー。

     理想を追い求めてフラれ続けている。


朝月美里:(あさつき みさと)

     お仕事が出来るお姉さん。

     最近、長く付き合っていた彼氏にフラれたようで。



涼介:(M)彼女にするなら年下で小さくてかわいくて、ふわふわしていて守ってあげたくなる子

   それでいて出来ればボンキュッボンで、料理上手でちょっとドジっ子の要素があればさらに良し

   ずっとそう思っていた。あの人に出会うまでは……





●バール・夜

   店内は少し暗く、客数も少ない。カウンターの席に美里が一人で座っている。


美里:(大きなため息)

涼介:こんばんは

美里:あ、涼介君

涼介:お疲れ様です、美里さん。遅くなってしまってすみません

美里:ううん。大丈夫よ

涼介:お隣よろしいですか?

美里:もちろん。そのために二名で予約したんだから

涼介:ありがとうございます

美里:今日もお疲れ様。残業?

涼介:する予定じゃなかったんですけど、帰り際に後輩に質問されちゃって

美里:お? ちゃんと先輩やってるのね

涼介:もちろんです! 俺だって後輩がいる立場ですから!

美里:もちろんね~。初めてここで会ったときは先輩さんに泣きついてたのにね

涼介:……あれは忘れてください……

美里:え~、どうしようかな~?

涼介:美里さ~ん

美里:ごめんごめん。だって、あまりにも印象的で忘れられないんだもの

涼介:……

美里:「俺の何がいけないんですか~」って……

涼介:(遮って)美里さん!

美里:どう? あの時の失恋の痛みは癒えたかな?

涼介:まぁまぁです

美里:あら、まぁまぁなの?

涼介:う~ん、正確に言うとこの間の失恋はもう忘れました

美里:あら早い

涼介:だって、「いくら考えても仕方ないから忘れなさい」って美里さんが言ってくれたじゃないですか

美里:あぁ、そういえばそうだったわね

涼介:えぇ? まさかアドバイスくれた美里さんの方が忘れたんですか?

美里:忘れてはいないわよ。あなたがずーっとうだうだ悩んで鬱陶しかったから

涼介:……美里さん、今日はいつにも増して辛辣ですね……

美里:そう?

涼介:そうです。何かありましたか?

美里:……ちょっとね。ごめん

涼介:え?

美里:もしかしたら八つ当たりしちゃってるのかも

涼介:美里さんが?

美里:うん。ごめんね、気を付ける……

涼介:(遮って)嬉しいです

美里:え?

涼介:どんどん八つ当たりしてください

美里:りょ、涼介君?

涼介:だって、あの美里さんが俺に八つ当たりしてくれるなんて!

美里:えっと……ごめん、どういう思考でそういう考えに至ったの?

涼介:え? だって、いつも俺の世話を焼いてくれる大人な美里さんが、俺に八つ当たりしてくれたんですよ? 

   嬉しいじゃないですか!

美里:えっと……ドMなの?

涼介:違います!

美里:違うの?

涼介:断じて違います!

美里:じゃあ、どういう?

涼介:八つ当たりって親しい人にしかしませんよね?

美里:まぁ、一般的には?

涼介:ですよね? ってことは、俺、美里さんに八つ当たりしてもらえるくらい親しくなったってことですよね?

美里:あぁ、そういう

涼介:え? 違うんですか?

美里:……違わないかな

涼介:やった! じゃあ、どんどん八つ当たりしてください! 俺、いくらでも受け止めます

   あ、でも、物理的なやつはやめてくださいね?

美里:(笑う)

涼介:美里さん?

美里:あぁ、ごめんごめん。いや、あまりにもポジティブすぎて。うん、ありがとう。もう大丈夫かな

涼介:え?

美里:涼介君のポジティブもらったから

涼介:そうですか……

美里:ちょっと、なに残念そうな顔してんのよ

涼介:……せっかく親しくなれたのに……

美里:いや、八つ当たりしなくても親しさは変わらないでしょ

涼介:本当ですか!

美里:(涼介の勢いに押されて苦笑しながら)え、えぇ

涼介:やった!

美里:(苦笑しながら)それで?

涼介:え?

美里:さっきの涼介君の話の続き

涼介:続き?

美里:そう。前の失恋は忘れたんでしょ? それなのにどうしてまぁまぁなの?

涼介:あぁ! それはいいんです!

美里:はい?

涼介:俺のことより美里さんのこと!

美里:私の?

涼介:はい。何があったんですか?

美里:あぁ、私のことはいいよ。本当にちょっとしたことだから

涼介:ダメです!

美里:え?

涼介:ちょっとしたことじゃないですよね?

美里:……

涼介:俺、聞きたいです

美里:……本当に大したことじゃないのよ?

涼介:それでも聞きたいんです

美里:元カレからね、連絡が来たの

涼介:え……元カレって……

美里:そう、この前話した人

涼介:なんて来たんですか?

美里:やっぱりよりを戻さないかって復縁要請

涼介:え……

美里:なんかね、今の彼女さんとの生活が思ってたとの違ったんだって。勝手よね

涼介:(遮って)ダメです!

美里:え?

涼介:そんな男と復縁なんて絶対にダメです!

美里:ちょ、ちょっと、涼介君?

涼介:そいつが美里さんのこと何て言ってふったか忘れたんですか? 

美里:忘れてないわよ

涼介:だったら!

美里:ねぇ、涼介君、落ち着いて

涼介:落ち着いてなんてられませんよ! 

   やっと、こんなに親しくなれたのに、やっと近くなれたのに……

美里:涼介君?

涼介:美里さん!

美里:は、はい

涼介:俺、美里さんのことが好きです! 大好きなんです! 

   だから、そんな男とじゃなくて俺と付き合ってください

美里:涼介君……

涼介:俺は美里さんよりも年下で、まだまだ頼りないし、ガキだってわかってます

   でも、美里さんが好きな気持ちは誰にも負けません! ちゃんと大人の男になります!

   だから、俺と付き合ってください!

美里:はい

涼介:え?

美里:よろしくお願いします

涼介:え? な、なんで?

美里:なんでって?

涼介:だって、美里さん……

美里:私、復縁するなんて一言も言ってないわよ

涼介:え?

美里:「お前より小さくて、ふわふわしてて守りたい存在を見つけたんだ。お前みたいに一人でやっていけそうな女は無理だ」なんて啖呵を切って出ていった男よ?

   誰がよりを戻したいなんて思うのよ

涼介:えっと、つまり……

美里:うん。涼介君の早とちり

涼介:(頭を抱えて)あぁ~!

美里:(微笑んで)素敵な告白をありがとう

涼介:……こんなはずじゃなかったのに……

美里:ん?

涼介:もっとちゃんとタイミングとか、シチュエーションとか、いろいろ考えてたのに……

美里:あら、そうだったの?

涼介:……はい

美里:ありがとう。でも、私は今の涼介君の言葉がすごく嬉しかったよ?

涼介:え……

美里:だって、すっごい必死になってくれて。あぁ、私のことこんなに想ってくれてるんだなって伝わってきた

涼介:……美里さん

美里:だから、ありがとう。こんな私だけどよろしくね?

涼介:もちろんです!

美里:でも、私でいいの?

涼介:え?

美里:涼介君のタイプって、年下で自分より小さくて天然ちゃんで、ボンキュッボンの可愛い子じゃなかったっけ?

涼介:なんで知ってるんですか!

美里:なんでって……ここでぐでんぐでんに酔っぱらっていた時にそれらしいこと言ってたし

   元カノさんの話聞いた時もそれに似たようなこと言ってたから、てっきりそういう子しか恋愛対象にならないんだって思ってたんだけど

涼介:それは忘れてください!

美里:え?

涼介:確かに、美里さんに出会う前はそんな感じの女の子がいいなって思ってましたし、そういう子ばっかり追いかけてました。それは否定しません

美里:ほら

涼介:でも、美里さんと会って変わったんです! 

   歳なんか関係ないし身長も関係ない。その他の要素だってただのお子様の理想だったんだって

美里:そっか……

涼介:大切なのはお互いを想い合えるか、大切に想えるかだと思うんです

   俺は、美里さんが大切です。守りたいって思いました

   そしてなによりも一緒にいたいって思ったんです

美里:涼介君

涼介:美里さん、あなたの隣はすごくあたたかくて、一緒にいてすごく安らげます

美里:私も同じ。涼介君の隣はあたたかくて、一緒にいるとホッとする

涼介:美里さん

美里:はい

涼介:俺は美里さんから見たら全然子どもだし、頼りないかもしれなけど、頑張ります! 

   だから、よろしくお願いします

美里:馬鹿

涼介:え?

美里:涼介君だけ頑張るのは違うでしょ?

涼介:あっ……

美里:二人で一緒に頑張っていこうね。ゆっくりと私たちのペースで

涼介:はい!

美里:(微笑んでから気が付き)あ……

涼介:美里さん?

美里:涼介君の話、聞いてない

涼介:あぁ。あれはもういいんです。解決したんで

美里:え? 解決したの?

涼介:はい。実は失恋したことはとっくの昔に忘れてました

美里:そうなの?

涼介:はい

美里:でも、さっきまぁまぁって……

涼介:悩んでたんです。失恋を忘れられたのは美里さんのおかげで、美里さんのことが気になっているけど、俺の理想は違うはずなのにって

   でも、さっき元カレさんから連絡が来たって聞いて、絶対に離したくないって思って

   あぁ、悩むだけ馬鹿だったなって

美里:(微笑んで)そっか

涼介:美里さん?

美里:いっぱい私のために悩んでくれてありがとう、涼介君

涼介:美里さん……

美里:あ、涼介君、ちょっと耳貸して?

涼介:え? はい、何ですか?

美里:(耳元で)私も涼介君のこと好きよ


   美里、涼介の頬にキスをする。


涼介:っ!

美里:あら、凄い動き

涼介:……み、美里さん、ずるいです……

美里:(微笑んで)これが大人の余裕ってやつね

涼介:……俺もいつか美里さんのことびっくりさせます!

美里:もう十分驚かされてるわよ

涼介:美里さん?

美里:何でもない。期待してるわ

涼介:はい!




―幕―




2020.10.29 ボイコネ投稿

2024.06.08 修正・HP投稿

紅く色づく季節

こちらは紅山楓のシナリオを投稿しております。 ご使用の際は、『シナリオの使用について』をお読みくださいませ。 どうぞ、よろしくお願いいたします!

0コメント

  • 1000 / 1000