【詳細】
比率:性別不問1
現代
時間:約5分
【あらすじ】
深夜三時。
文字を見つめ続け、気が付いたらこんな時間。
焦りと不安でそれから離れられないでいる。
こんな時間に、思考の海になんて飛び込むもんじゃない。
【登場人物】
私:気が付いたら深夜三時なってしまっていた人。
●自室
深夜三時
ずっと意識を向けていた文字からゆっくりと目を上げる
大きく漏れるため息。今日はどのくらいこれと向き合っているのだろうか
どんなに読んでも、どんなに探っても己の中の靄は晴れない
深く潜ろうとすればするほど、探ろうとすればするほど底なし沼に引きずり込まれる
こんな時は休むか、少しこの文字から離れればいいことは頭の中ではわかっている
わかってはいる、が、行動に移すにはなんらかの勇気がいる
いや、『勇気』というには仰々しいか
だが、自分にとってはそれに等しいものなのだ
それから離れる恐怖、それは独り光が届かない深海に投げ出される感覚だ
焦燥感、絶望感、無力感、失望感、そして、希死
全ての負の感情が次の呼吸をさせまいと迫って来る
そして、無防備な足首に手をかけ更なる深海へと引きずり込む
そうはさせまいと必死にあらゆる方法を使って抵抗するが、結局は敵わない
だって、それの正体は……
……己だから……
自分で自分の足を引っ張っていたら世話がない
いつだってそう、自分の足を引っ張ってその場に留まらせようとするのは自分自身だ
それは一種の『自己防衛』に近い本能
自分の心が傷つかないように、怖い思いをしなくてすむように
「危ないよ、止めようよ」と言ってくれているのだ
有難い声
でも、『現状』に満足できないのであれば、それを振り払うしかない
その先に新しい世界が広がっているから
落ち着こう
今ここで止まるか進むかを決めきれない自分が出す精一杯の答え
自分自身との一時休戦
席を立ちキッチンへと向かう
いつものルートで電子ケトルに水を入れスイッチを押す
マグカップを用意し、コーヒーをセットする
この時間にカフェインなんてと怒られるだろうか
頭の中にふと同期の呆れ顔が浮かぶ
君でもこんな風に悩むことがあるんだろうか
穏やかで優しくて、それでいて才能もあって……
自分から見れば羨ましい所しかない人
誰かと比べなんて相当だな……
誰かと比べたところで答えなんて出ない。寧ろ思考の迷宮に入り込むだけ
分かっている、分かってはいるのだ……
これも自分の弱さ
大きく息を吸いこんで吐き出す
それもこれも全部時間のせいだ
きっとそうだ
深夜に思考を深く潜らせるものではない
静寂の中に独り取り残されているからこんなことを考えてしまうんだ
今日はもう寝てしまおう
ここまではやったんだ
続きは起きた自分にお願いしよう
無責任かもしれないが、もっと深いところまで落ちるよりはそれがいい
深夜三時
まだまだ外は暗い
それよりも暗く深い思考の海に溺れないようにそっと瞳を閉じた
―幕―
2025.0918 投稿
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