【詳細】
比率:性別不問1
現代・シリアス・その他
時間:約5分
【あらすじ】
やっぱり君は優しい人だ。
君は自分のことをダメだっていうけれど、俺はそうは思わない。
だってそれは……
*こちらのシナリオは男性口調で書いておりますが、性別不問とさせていただいております
一人称、二人称、語尾の変更可でございます
*こちらのシナリオは『仮面の奥に』と対のシナリオとなっております
【登場人物】
俺:いつも笑顔の優しい人の本音をある日聞いてしまった人。
俺:
君は言う
自分はダメな人間なのだと
弱くてズルい人間なのだと
あれはいつの時だっただろうか
みんなで行動していた時に急に君の姿が見えなくなって
俺はみんなに一言断りを入れて君を探しに行った
みんなはただの迷子じゃないかと言って、さして心配もしていなかった
「あの子だから大丈夫」だと
いつもの俺だったらみんなと同じくそう思っていただろう
ただ、その時は違っていた
何故かわからないけれど、「探さなくちゃ」と思った
でも、散々捜しても君の姿はなくて
いつも来る知っている狭いアーケードのはずなのに、今日は何故か俺の知らない広い空間のように思えた
もう諦めてみんなと合流しよとスマホを出したとき
誰も気に留めないような裏路地で一人蹲る君を見つけたんだ
君にそっと近寄って、「大丈夫?」って声をかけると、君の肩が大きく揺れた
急に声をかけてびっくりさせてしまったかと思って、「俺だよ」と言うと、か細い声で一言、「ごめんなさい」と返ってきた
その声色から、君が泣いることが分かった
でも、君は明るい声で、「大丈夫。ちょっと人に酔っちゃただけだから」と言う
見るからに、聞くからに大丈夫そうではない様子の君
発する声は震え、呼吸は浅いのかヒューヒュー音がして、身体はカタカタと震えている
君が見られたくないものを俺は見てしまった
直感的にそう思った
そうであるならば、俺はここを立ち去るべきで、それが正解なのに……できなかった
身体を小さくしている君は、まるで小さい子どもが迷子になってしまって一人不安で泣いているように見えたから
だから、一人にはしたくなかった
時折送られる通りからの好奇な視線から隠すように俺は君の横に立ち、壁にもたれかかる
すると、君の肩が少し揺れる
「私は大丈夫だよ?」
君はまた震える声で明るく言う
「別に。俺が勝手に心配だからここにいるの」
俺がそう言うと君はバッと顔を上げた
その顔は涙に濡れて、ひどく不安そうだった
そして、震える声で呟く
「どうして?」と
そこからどれだけの時間がたったのだろう
短いような、長いような
正確な時間なんて計っていないからわからないけれど、そんな時間が過ぎたとき、君がポツリと零した
「……私はダメな人間なんです」
君がどうしてあの時俺に気持ちを明かしてくれたのかは今でもわからない
でも、あの時、はっきりとわかったのは、彼女が抱えていた爆発しそうなくらい大きなマイナスな感情
自分をダメだと卑下し、弱いと貶す
俺は、君の話を黙って聞いた
君は自分のことを悪者であるかのよう話す
でも、俺が思ったのはやっぱり、君は「優しい人」だということ
自分を押し殺してでも周りとのバランスを考える
その時の最善の策をとる
それが良いことなのか悪いことなのかはわからない
だけど、俺には出来ない凄いことだと思った
そして、それと同時に脆い君のことを守りたいと思った
これがどんな感情なのかはまだわかない
親愛なのか恋なのか、はたまた弱者の傷の舐め合いなのか
……いずれであったとしてもいいじゃないか
君が一人孤独に立ち向かうというのであれば、俺は傍にいてそれを支えたい
―幕―
2021.03.29 ボイコネにて投稿
2022.08.17 加筆修正・HP投稿
お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)
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