突然の電話


【詳細】

比率:男1:女1

現代・日常・ラブストーリー

時間:約10分


【あらすじ】

夜。

家でくつろいでいる直人の元に彼女の絵里から一本の電話が入る。

いつもは突然かかって来ることのない彼女からの電話。

その理由とは……


【登場人物】

直人:(なおと)

   絵里の彼。ホラーものが大好き。


絵里:(えり)

   直人の彼女。ホラーものは苦手。



●直人の家

   映画を見ながらゆったりとしている直人。

   スマホに着信が来る。


直人:ん? 絵里から? (通話ボタンを押して)もしもし?

絵里:あ、直人? こんばんは

直人:おぉ、こんばんは? どうしたんだ?

絵里:え?

直人:急に電話してきて。しかも急にかしこまった挨拶してくるなんて、普段の絵里らしくないじゃん

絵里:え? そ、そう?

直人:そうだよ

絵里:そんなことないわよ!

直人:そうか? いつもだったら、電話する前にメッセージくれるし、挨拶もそこそこに話しするじゃん

絵里:いつも通り! 平常運転!

直人:(勢いに押されて)な、ならいいんだけど……で、どうしたんだ?

絵里:どうしたって……

直人:何か用事があって電話かけてきたんだろ?

絵里:そ、そう、何してたかなって?

直人:(笑いながら)なんだよそれ

絵里:なによ

直人:それで電話してきてくれたの?

絵里:そ、そうよ、悪い?

直人:いや、ありがとう

絵里:へ?

直人:ラインのメッセージでも出来そうな話なのに、わざわざ電話してきてくれたんだろ? だから、ありがとう

絵里:……どういたしまして

直人:(微笑んで)ん? なんで片言みたいになってるの?

絵里:いいでしょ!

直人:(嬉しそうに微笑んで)はいはい

絵里:なによ!

直人:ん? いや、普段は遠慮して絵里の方から電話なんて滅多にして来てくれないからさ

絵里:それは……

直人:俺はいつだって電話してきてほしいんだけどな~

絵里:休んでるところ邪魔したくないの!

直人:知ってる。だから、嬉しさを噛みしめてるの

絵里:ば、馬鹿じゃないの?

直人:はいはい。俺はね、今、映画見てる

絵里:え?

直人:俺が今何してるのか気になったんでしょ?

絵里:う、うん

直人:だから、今、映画見てるよって

絵里:あ、あぁ、そうなんだ。ごめん、邪魔しちゃった?

直人:ううん。大丈夫、ちゃんと一時停止してるし。もう何回か見てるからね

絵里:……ちなみになんだけど……

直人:ん?

絵里:今、直人が見てる映画って……

直人:こないだ出た新作のホラーだよ?

絵里:ひっ!

直人:ん? 絵里?

絵里:(小声で)なんでよりによってこのタイミングでホラーなんて見てんのよ……

直人:絵里~?

絵里:っ! な、なに?

直人:どうかした?

絵里:べ、別に!

直人:あぁ!

絵里:な、何よ?

直人:もしかして一緒に見たかった?

絵里:は? そんなわけないでしょ! 彼女の苦手なものくらい覚えておきなさいよ!

直人:いや、忘れてたわけじゃないよ。ただ、怖いもの見たさっていうの? 怖いけど見たいから一緒に見てほしかったのに~的なアレかなって

絵里:なわけないでしょ! ただでさえ今怖いのに、なんで追加でそんな怖いもの見なきゃいけないのよ! 大体、それって確か今めちゃくちゃ恐怖レベルが高くて、普通のホラーじゃ満足できないホラーマニアにも超おすすめって言われてる映画でしょ? そんなん見られるか!

直人:……えっと、絵里?

絵里:なによ!

直人:えっと……今、怖いの?

絵里:あっ!

直人:何かあった? あ、もしかしてストーカーとか!

絵里:ち、違うから!

直人:本当に?

絵里:本当よ! なんでいきなりそんな突拍子もない考えに行きつくかな……

直人:だって、絵里、綺麗だし、かわいいし、心配になるよ

絵里:そ、そんなことありません……

直人:そんなことあるの。う~ん、でもそれが違うとなると……

絵里:余計なこと詮索しなくていいわよ!

直人:だって、今怖いんでしょ?

絵里:うっ……

直人:だったら何とかしてあげたいし……う~ん……

絵里:……直人のせいだ……

直人:ん?

絵里:全部直人のせいだ!

直人:えぇ、俺?

絵里:そう!

直人:な、なんで?

絵里:だって、直人のせいで怖い動画見て、動画見てる途中でカーテンの隙間とかお風呂場とか玄関とか気になって怖くなって、どうしてしていいか分からなくて電話かけたら、直人がホラー映画見てて、しかも『一緒に見たかった?』とか訳わかんないこと言われて……

しかも、こんな私見られるなんて……最悪……

直人:……えっと、つまり……ホラー好きな俺のために慣れてくれようとして、一人で怖い動画見ちゃって怖くなっちゃって、俺に電話をくれた……ってことでいいかな?

絵里:……

直人:絵里?

絵里:(小さな声で)……悪いか……

直人:(微笑んで)ううん。嬉しいよ

絵里:は? 彼女が怖がってるのに?

直人:そこじゃなくて、俺のために頑張ってくれたところ

絵里:……

直人:ホラー苦手でめちゃくちゃ嫌ってたのに、俺のために見てくれたんでしょ?

絵里:……だって……

直人:うん?

絵里:……いつも私の好きなこととか好きなものに付き合ってもらってるから、ちょっとでも直人の好きなもの大丈夫になって一緒に見たいって思ったんだもん。だから、遊園地のお化け屋敷とか物理的なものとか、長時間の映画は無理でも動画ぐらいならって……

直人:(微笑んで)絵里らしいな

絵里:え?

直人:遊園地のお化け屋敷、映画館でのホラー映画鑑賞なら俺が隣にいてあげられるよ? それに、その夜も一緒にいてあげられる

絵里:……

直人:でも、一人で克服したいって思ってくれたんだろ? そうやって陰で俺のために頑張ってくれる絵里はすごいなって思うよ

絵里:……別に、直人のこと驚かせたかっただけだし

直人:そっか、じゃあ、そういうことにしておこう

絵里:……ねぇ、直人

直人:なに?

絵里:……今から、そっち言ってもいい?

直人:ダメ

絵里:え……

直人:俺が絵里の家に行くから。こんな夜に絵里を外に出すなんて考えらんないし。それに、外の暗闇で急に怖くなって立ち竦んじゃって、そこを他の男に何かされでもしたら……それこそ気が気じゃない

絵里:……あ……

直人:だろ? 外の暗い道とか今の絵里にはホラー的に怖いだろうって思うし、俺としてもどこぞに潜んでいるかもしれない輩がいたら怖いからさ

絵里:……わかった

直人:うん、いい子いい子

絵里:子どもじゃない!

直人:ごめんごめん

絵里:……早く来てね

直人:もちろん、これから全力で急がせてもらいます

絵里:でも、走ってこないで

直人:(苦笑して)どっちだよ

絵里:夜道は危険だから

直人:うん、わかった。ありがとう、絵里

絵里:……電話、このままでいい?

直人:いいよ。じゃあ、どうでもいい話しながらそっちに行く

絵里:……うん

直人:怖かったら、目つぶってソファに横になってな。合鍵持ってるし、玄関は開けに来なくてもいいから

絵里:わかった

直人:あ、チェーンはしてないよね?

絵里:……多分

直人:(苦笑して)怪しいんだね

絵里:……うん

直人:防犯意識が高いのはいいことです

絵里:……ごめん

直人:いいよ。じゃあ、もし家に着いてチェーンかかってたら、開けに来てね

絵里:わかった

直人:……寝るなよ?

絵里:寝ないよ!

直人:(笑って)それだけ元気なら大丈夫だな。じゃあ、今から家出るから

絵里:……うん、直人……

直人:ん?

絵里:ありがとう

直人:(微笑んで)どういたしまして、かわいいかわいい彼女さん

絵里:っ! うるさい!



―幕―



2020.09.22 ボイコネにて投稿

2022.08.22 加筆修正・HP投稿

お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

紅く色づく季節

こちらは紅山楓のシナリオを投稿しております。 ご使用の際は、『シナリオの使用について』をお読みくださいませ。 どうぞ、よろしくお願いいたします!

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