忘れんぼうの君


【詳細】

比率:男1・女1

現代・ラブストーリー

時間:約10分


【あらすじ】

平日の夜。

公太の家へと帰ってきた菜々美。


「今日だけは一緒にいたかったんだ」


いつもなら平日に自分の家に来てほしいと言わない彼が、彼女を家に呼んだ真意とは……



【登場人物】

公太:(こうた)

    菜々美の彼氏。彼女とは幼馴染。

    幼馴染の期間が長かったため、なかなか恋人らしいことに慣れない菜々美をっ可愛いと思っている。


菜々美:(ななみ)

    公太の彼女。彼とは幼馴染。

    幼馴染の期間が長かったため、なかなか公太に素直に甘えることが出来ない。



●公太の家・夜

   仕事終わりで彼女の菜々美が帰ってくる。

   鍵を開け、部屋に入って来る菜々美。


菜々美:こんばんは~。お邪魔しま~す

 公太:おぉ、来たな

菜々美:来たなって、来るわよ。誰よ、遅くなっても今日はこっちに帰ってこいって言ったの

 公太:俺だな

菜々美:でしょ? だから、ちゃんと公太の家に帰って来ました

 公太:おう、ありがとうな

菜々美:どういたしまして。それで?

 公太:ん?

菜々美:何かあったの?

 公太:何かって?

菜々美:いや、平日にわざわざ自分の家に来いなんて、いつもの公太なら言わないじゃん

 公太:……あぁ

菜々美:だから、何かあったのかなって

 公太:いや

菜々美:はい?

 公太:何もない

菜々美:……帰る

 公太:おい!

菜々美:何かあったのかと思って急いで帰ってきたのに……

 公太:俺のために急いでくれたんだ?

菜々美:……

 公太:(微笑んで)ありがとう

菜々美:……別に

 公太:何があったわけじゃないけど、今日だけは一緒にいたかったんだ

菜々美:え?

 公太:ただの俺の我儘。ごめんな

菜々美:……公太の我儘

 公太:そう。ってなわけで、今夜は俺の家にいてくれませんか? 明日の朝はちゃんとおいしい朝食作りますので

菜々美:……仕方ないな

 公太:ん?

菜々美:今から自分の家に帰ったって仕方ないから、一緒にいてあげる!

 公太:(微笑んで)ありがとう

菜々美:……ん

 公太:じゃあ、寒い所来てくれたんだから、先にお風呂入って来なよ

菜々美:うん

 公太:タオルといつものパジャマ、後で洗面所に持って行っとくから。荷物とコートだけ貸して

菜々美:あ、ありがとう

 公太:どういたしまして。(荷物とコートを受け取って)じゃあ、いってらっしゃい

菜々美:……覗かないでよ?

 公太:覗かないよ!



●公太の家・リビング・数分後

   スマホをいじる公太。

   お風呂から上がった菜々美が肩にタオルをかけて入ってくる。


 公太:お! おかえり~。いい匂いだね

菜々美:……お風呂、バラの匂いした

 公太:うん。菜々美が前に使ってみたいって言ってた入浴剤。せっかくだから使ってみた。お湯加減とかどうだった?

菜々美:ちょうどよかったよ

 公太:よかった

菜々美:……公太、やっぱりなんかあった?

 公太:(苦笑して)本当に、もう……

菜々美:ん?

 公太:菜々美、こっち来て、ここに座って

菜々美:うん


   菜々美、公太の隣に座る。菜々美をそっと抱きしめる公太。


菜々美:ちょっ、公太?

 公太:ん?

菜々美:ん? じゃなくて!

 公太:もう、まだ慣れないの

菜々美:……


   公太、菜々美の首元に顔を寄せる。


 公太:う~ん、いい匂い。やっぱり、あの入浴剤にして正解だった

菜々美:……

 公太:ねぇ、菜々美

菜々美:……何?

 公太:今度の休み、久しぶりに隣駅のリストランテに行こうか

菜々美:え!

 公太:どうしたの?

菜々美:どうしたのはこっちの台詞だよ。どうしたの? 公太、ああいう堅苦しいお店苦手でしょ?

 公太:苦手だよ

菜々美:じゃあ、どうして……

 公太:でも、菜々美は好きだろ。イタリアン

菜々美:好きだけど……

 公太:だったら、俺、頑張るよ。あそこの店、めっちゃうまいって同期の奴も言ってたし

菜々美:……別にいい

 公太:え?

菜々美:別に、公太が無理してまで食べたい料理じゃないから

 公太:……菜々美

菜々美:だったら、バルとかビストロとか、もっと敷居の高くない、堅苦しくないところでご飯食べよう

 公太:……

菜々美:(公太の顔を覗き込み)公太?

 公太:あぁ、もう!

菜々美:え?

 公太:こういうときだけでも、かっこつけさせてよ

菜々美:え? え?

 公太:……まぁ、それが菜々美の良い所だし、好きな所でもあるんだけどさぁ……

菜々美:えっと……

 公太:菜々美、明日って何の日だ~?

菜々美:え? 明日?

 公太:そう、明日

菜々美:え? 何か約束してたっけ?

 公太:いや

菜々美:じゃあ、大事な会議とか接待が入ってるとか?

 公太:入ってません

菜々美:そうだよね。入ってたら私のこと呼んでないよね

 公太:え? それとこれとは話が別だよ

菜々美:え?

 公太:菜々美は俺の癒しだから。菜々美がいつでもうちに来られるんならいつでも来てほしい

菜々美:……

 公太:ね?

菜々美:……はい

 公太:(微笑む)うん

菜々美:あれ? じゃあ、明日って何があるの?

 公太:あぁ……やっぱり、忘れてるよね。いや、そんな気はしてたけど……

菜々美:な~に?

 公太:本当は日付が変わってから言う予定だったんだけど……

菜々美:はい?

 公太:……菜々美、誕生日おめでとう

菜々美:え? あ……そっか……

 公太:やっぱり、忘れてた?

菜々美:忘れてた……

 公太:(苦笑して)だと思った

菜々美:……えっと

 公太:(微笑んで)いろいろ辻褄があった?

菜々美:……はい、あいました

 公太:平日の夜なのに菜々美に俺の家に来てほしいって言ったのは、菜々美の一年が終わる瞬間と新しく始まる瞬間に一緒にいたかったから。無理を言ってごめんな

菜々美:ううん! そんなことない!

 公太:ありがとう。本当は菜々美の家に俺が行くのが良いかなって思ってたんだけど、そうするといろいろ仕組めないなって

菜々美:(苦笑して)仕組むって……

 公太:流石に仕事終わってからだから大がかりなものは出来ないけど、ちょっとしたサプライズはしたいだろ

菜々美:ありがとう。お風呂、気持ちよかったよ

 公太:うん。それならよかった

菜々美:でも、今度の休みはリストランテには行かないからね

 公太:う~ん、やっぱりダメか

菜々美:当たり前。イタリアンは好きだけど、公太が無理して一緒にする食事なんて嫌だから

 公太:そっか

菜々美:そう。どこに行くかじゃなくて、公太と過ごせることが大事だから

 公太:……菜々美

菜々美:ね?

 公太:あぁ、わかった

菜々美:公太

 公太:ん?

菜々美:本当にありがとう

 公太:俺の方こそ

菜々美:え?

 公太:菜々美、生まれてきてくれて、俺に出会ってくれて、こうして俺の傍にいてくれてありがとう

菜々美:……うん

 公太:(微笑んで)本当はこのままずっとこうして抱きしめていたいけど、もうちょっとだけ俺に時間頂戴

菜々美:え?

 公太:プレゼントは日付が変わってから。でも、その前に菜々美の好きなケーキ屋さんのホールケーキ買ってきたから、俺と一緒に食べてくれる?



―幕―




2021.04.09 ボイコネにて投稿

2022.09.15 加筆修正・HP投稿

お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)


紅く色づく季節

こちらは紅山楓のシナリオを投稿しております。 ご使用の際は、『シナリオの使用について』をお読みくださいませ。 どうぞ、よろしくお願いいたします!

0コメント

  • 1000 / 1000