【詳細】
比率:女1
現代・ラブストーリー
時間:約5分
【あらすじ】
クリスマスの夜。もうすぐ日付が変わってしまう頃。
恋人と喧嘩してしまった桃花は一人、部屋で料理とケーキを見つめ彼を思い出す。
*こちらは、『少しでも早く君の元へ』の対となる彼女視点のシナリオです。
こちらだけでもお使いいただけます。
【登場人物】
桃花:(ももか)
20代。
クリスマス・イブに恋人と喧嘩をしてしまい、後悔している。
●十二月二十五日・二十三時頃
テーブルの上に置かれているケーキと冷めた料理を見つめる桃花。
桃花:
本当はこんなクリスマスになるはずじゃなかった
今日は十二月二十五日、それは大切な人と過ごす日
かく言う私も恋人と過ごすはずだった
昨日までは……
クリスマス・イブという聖なる夜の前日に私は恋人と喧嘩した
理由は大人ならばよくあること
急に彼に仕事が入ってしまったのだ
彼の職業はサービス業。クリスマスなんてイベントの日の夜に休みがもらえるなんて、そもそもが奇跡に近かった
だから、私は浮かれていた。だって、無理だって思っていたものをプレゼントしてもらえたのだから
彼とのクリスマスの夜という時間を
それが昨日突然取り上げらえた
アルバイトのスタッフさんが熱を出してしまったのだ
分かってる。社員の彼が代わりに入るのが正当なことで、私の方がわがままだってこと
でも、どうしても抑えられなかった
だって、仕事が入ったら日付が変わるまで彼は帰ってこられないって知ってるから……
「私のことは気にしなくていいよ」
精一杯の強がりだった
でも、彼はすごく申し訳なさそうで、何度も謝ってくれた。でも、昨日の私にとってはそれすらも油でしかなくて……
「じゃあ、どうしろっていうのよ!」
何回目かの彼の謝罪についに怒りをぶつけてしまった
ハッと気が付いたときはもう遅くて。彼は一言、『ごめん』と言って私の部屋を後にした
それから私はどう過ごしたのか分からない
でも、日々の習慣というのはありがたいもので、きちんと会社に行って仕事をこなして、家に帰ってきて、こうしてケーキと料理を作って今に至る
分かっているんだ
ちゃんと彼にごめんなさいって伝えなきゃいけないこと
でも、怖くて。伝えられなくて
時間を置けば置くほど怖くなっていく。電話をして、彼に拒絶されたらどうしようと。彼はそんな人じゃないと分かっている。でも、怖いのだ
自分では何もできなくて、じっとスマホを見ていたら、急に着信が来た
相手はずっと一日中私の思考を支配していた彼
怖いけど、出なければ。ここで終わってしまうのは嫌だ
「……もしもし」
恐る恐る電話に出ると、聞こえてきたのは息が切れている彼の声
「どうした……」
どうしたのと聞こうとした私の声は彼の声に遮られた
『今から行くから』
心臓がドキリとした。もしかしたら、これから別れの言葉を言われるんじゃないか
でも、私の心配は次の言葉で吹き飛ばされた
『桃花に今日中に会いたいから、仕事死ぬ気で終わらせてきた』
嬉しかった。自然と涙がこぼれた。私の恋人はこんなにも優しい人なのだ
「待ってるから。ずっと待ってるから。だから、ゆっくり来て。ケガとかしてほしくないから」
声が震えないように、必死に頑張って言葉を紡いだ
泣いているって分かったら、彼はきっともっと急いでしまうから。でも、彼はそれすらも悟ってくれて
『わかった。ゆっくり行くから。待ってて』そう言ってくれた
そして、『桃花、愛してる』その言葉で電話を切った
もう数分で彼がこの部屋に来てくれる
私が今出来ることは、涙を拭いて暖かい料理と彼が好きだと言ってくれる笑顔で急いで帰ってきてくれる彼を出迎えること
さぁ、とびっきりの笑顔で迎えよう
「おかえりないさい。ありがとう。そして。ごめんなさい」
―幕―
2020.12.25 ボイコネにて投稿
2022.10.09 加筆修正・HP投稿
お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(wwwpakutaso.com)
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