【詳細】
比率:男2:女2
現代・ラブストーリー・青春
時間:約20分
【あらすじ】
高校三年生の夏。
夏祭りをきっかけに動き出す四人の恋愛関係。
あの人の瞳に映るのは誰ですか?
【登場人物】
大山 奈央:(おおやま なお)
高校三年生。
面倒見がいい女の子。和樹の幼馴染。綾香とは親友。
山崎 綾香:(やまざき あやか)
高校三年生。
素直な女の子。奈央とは親友。和樹のことが好き。
木村 和樹:(きむら かずき)
高校三年生。
学年で人気の男子。浩輔とは親友。
加藤 浩輔:(かとう こうすけ)
高校三年生。
無口で空気が読める男子。和樹とは親友。
●学校・昼休みの外庭
綾香と奈央がお昼ご飯を食べている。
奈央:それでね。和樹の馬鹿、今日もお弁当持っていくの忘れてさ~
綾香:……
奈央:で、おばさんが慌ててそのお弁当私の家に持ってきて。本当あいつのせいで朝からバタバタだったんだよ
綾香:……
奈央:ん? 綾香、どうしたの? 食べないの?
綾香:……うん
奈央:どうした? 元気ないけど……
綾香:(遮って)奈央ちゃん!
奈央:な、何?
綾香:奈央ちゃんって和樹君と仲いいよね?
奈央:仲いいっていうか……幼馴染だし、高校まで一緒だからね。腐れ縁って感じかな?
綾香:……
奈央:綾香?
綾香:奈央ちゃん、お願いがあるの!
奈央:おぉ、何?
綾香:今度の日曜日、神社のお祭りがあるでしょ?
奈央:あぁ、今週だっけ?
綾香:うん
奈央:それがどうかしたの?
綾香:……私、そこで告白しようと思うの
奈央:え? そうなの? 誰に?
綾香:……和樹君
奈央:え……
綾香:だから、奈央ちゃん、協力して!
奈央:え? わ、私?
和樹:(少し遠くから)あ、奈央いた!
和樹、奈央を見つけて走ってくる。隣には浩輔がいる。
奈央:あ、和樹。加藤君
浩輔:ん
和樹:奈央~! ありがとな! 奈央が弁当届けてくれなかったら、今日、昼飯抜きだったよ~
奈央:あ、うん……
綾香:和樹君、浩輔君、こんにちは!
和樹:あぁ、山崎さん、こんにちは! 今日も奈央とご飯食べてくれてるの? ありがとう!
奈央:ちょっと!
和樹:何?
奈央:あんたは私の保護者かなんかか!
和樹:え? 違うの?
奈央:は?
和樹:だってそうでしょ? 俺の方がしっかりしてるし!
奈央:はぁ? どの口が言ってるの?
和樹:え? この口だけど?
奈央:ほほう? いつも高確率でお弁当を忘れて、おばさんを困らせて、私に届けさせてるあんたがそれを言いますか?
和樹:ぐ……
綾香:朝練、大変ですもんね
和樹:山崎さん!
奈央:こら、綾香! この馬鹿を甘やかさなくていいから!
和樹:山崎さんは優しいな~。どっかの誰かさんと違って!
奈央:はぁ?
浩輔:(ため息)その辺にしとけ
和樹:なんだよ? 浩輔は奈央の味方するのか?
浩輔:味方するしない以前の問題だ。弁当忘れるお前が悪いんだろうが
和樹:ぐ……
奈央:流石、加藤君
和樹:うぅ……
浩輔:(ため息)俺、教室帰るぞ
和樹:待った!
浩輔:だったら、さっさと用件伝えろ
奈央:あ、そういえば。昼休みにここに来るなんて、なんか用事でもあったの?
和樹:あぁ。奈央と山崎さんって今週の日曜日って時間あるかな?
奈央:え?
綾香:今週の日曜日ですか?
和樹:そう。もしよかったら、神社のお祭り、四人で行かない?
奈央:え……
綾香:本当ですか!
和樹:うん。せっかくのお祭りだし、浩輔と男二人ってのも寂しいしさ
浩輔:悪かったな
和樹:いやいや、だって男二人で祭りって寂しいだろうが!
浩輔:……そういうわけで大山と山崎に声かけたいってこいつがうるさくて。悪いな
和樹:なんで謝ってるんだよ!
浩輔:そりゃ、お前が迷惑かけてるから……
綾香:(遮るように)わ、私は嬉しいです! ちょうど、私たちもお祭り一緒に行こうかって話してて。ね、奈央ちゃん?
奈央:え? あ、う、うん
綾香:せっかくなら、大人数の方が楽しいですよね!
和樹:うんうん! だろだろ?
綾香:二人がいいなら、一緒に行きたいです。ね、奈央ちゃん?
奈央:あ、うん、そうだね。女子二人より、こんな馬鹿でも男子が一緒の方が面倒ごととか巻き込まれなさそうだし……
和樹:はぁ? こんなってなんだよ!
奈央:こんなでしょ?
和樹:(軽く鼻で笑って)まぁ、奈央は何があっても大丈夫そうだけどな
奈央:はぁ?
和樹:奈央は大丈夫だろ。何かあっても倒せそうだし。山崎さんの方が心配だよ
綾香:え! そんな! 私も面倒ごとなんて巻き込まれませんよ!
和樹:そんなことないでしょ。山崎さん、かわいいし、小さいし
綾香:あ、それって身長のこと言ってます?
和樹:あぁ、ごめん! 馬鹿にしたわけじゃなくて!
綾香:(微笑んんで)わかってます。大丈夫ですよ
奈央:……
浩輔:……じゃあ、この四人で行くってことでいいんだな?
和樹:おう!
浩輔:わかった。じゃあ、当日、神社裏の橋のところで
綾香:はい!
和樹:時間は後で奈央に送るな!
奈央:うん、わかった
和樹:じゃ、またな。山崎さんも、日曜日よろしくね
綾香:はい!
和樹、浩輔去る。
綾香:奈央ちゃん、奈央ちゃん! どうしよう!
奈央:よかったじゃない!
綾香:うん、嬉しい! でも、どうしよう……
奈央:なんで?
綾香:だって、急に誘われたら、心の準備が……
奈央:(笑って)自分から誘うつもりだったのに?
綾香:自分から誘うのと、和樹君から誘ってもらうのとじゃ違うの!
奈央:そっか
綾香:奈央ちゃん、当日ってやっぱり浴衣の方がいいよね?
奈央:そうだね、お祭りだったら、やっぱり浴衣の方がいいんじゃない。和樹に告白するんでしょ?
綾香:う、うん。そうだよね、浴衣頑張って着られるようになる!
奈央:頑張って! 私も手伝うからさ
綾香:奈央ちゃん! ありがとう!
●神社裏の橋・夜
和樹が浴衣姿で一人待っている。
和樹:ちょっと早く来すぎたかな……
綾香:あ! 和樹君!
和樹:あ、山崎さん!
綾香:ごめんなさい! 遅くなっちゃって!
和樹:大丈夫だよ。俺も今来たところだし、待ち合わせの五分前だし
綾香:よかった……あれ? 奈央ちゃんと浩輔君は?
和樹:まだ来てないよ。あの二人にしちゃ珍しいよね。いつも待ち合わせ時間に余裕持って来てるのに……
綾香:そうですよね。あ、でも、今日は浴衣だから!
和樹:あぁ、そっか。浴衣って確かに動きにくいもんね。奈央も浴衣で来るって?
綾香:はい。一緒に浴衣で行こうねって約束したんで!
和樹:そっか
間
綾香:あ、あの!
和樹:ん?
綾香:今日は誘ってくれてありがとうございます!
和樹:いやいや、こっちこそ! 男二人に付き合ってくれてありがとう。誘っておいてあれなんだけどさ……
綾香:はい?
和樹:もしかして、奈央と二人で来たかったりした?
綾香:え? どうしてですか?
和樹:いや、こういうのって女の子同士の方が楽しいだろうし……
綾香:(遮るように)そんなこと!
和樹:え?
綾香:そんなことありません。私は、誘ってもらえて嬉しかったです!
和樹:(嬉しそうに微笑んで)そっか……
綾香:はい!
間
和樹:そ、それにしても、二人とも遅いな
綾香:そ、そうですね。あ、私、連絡してみます!
和樹:あぁ、俺も!
綾香:(スマホを取り出して)あ、あれ?
和樹:どうかした?
綾香:奈央ちゃんから連絡が来てて。「ちょっと鼻緒ずれしちゃったから、遅くなる。先に和樹と二人で楽しんでて。後で合流しよう」って……奈央ちゃん、大丈夫かな……
和樹:どこにいるかわかる? この人混みで一人は流石に……
綾香:そうですね! ちょっと聞いてみます!
和樹:俺も浩輔に連絡しと……あ……
綾香:浩輔君から何か連絡来てます?
和樹:うん。「途中で大山と会った。今、大山と一緒にいるから心配するな。時間かかるだろうから先にいっとけ」だって
綾香:よかった……
和樹:あぁ、浩輔と一緒にいるなら安心だね
綾香:そうですね
和樹:じゃあ、二人の言葉に甘えて……先に一緒に行こうか?
綾香:(照れながら)はい
和樹:あ!
綾香:え?
和樹:……手
綾香:手?
和樹:この人込みではぐれたら大変だし、浴衣歩きにくいでしょ? ……だから、手つなごうか?
綾香:(和樹の手を取り)……はい
和樹:(綾香の手を握り)うん。じゃあ、行こうか、綾香さん
綾香:っ! はい!
和樹、綾香手を繋いで神社の中に入っていく。
それを少し離れたところで見守る、浩輔と奈央。
奈央:行ったか~。これでよし。(振り返って)加藤君、協力してくれてありがとう!
浩輔:あぁ
奈央:さてさて、あとはお互いにうまくやってくれるといいんだけどな~。まぁ、あの感じなら心配ないか
浩輔:……よかったのか?
奈央:え?
浩輔:あの二人を二人っきりにして
奈央:なんで?
浩輔:……言っていいのか?
奈央:え?
浩輔:好きなんだろう、和樹のこと
奈央:……気が付いてたんだ……
浩輔:……悪い
奈央:加藤君が謝る事じゃないでしょ。そっか、気づいてたんだ……
浩輔:あぁ
奈央:私、そんなにわかりやすかった?
浩輔:いや
奈央:う~ん、ダメだな~、私……ってか、加藤君が気が付いてるのになんであいつは気が付かないかな……
浩輔:……
奈央:(苦笑しながら)本当に鈍感だよね
浩輔:そうだな
奈央:でも、仕方ないっか。あいつにとって私はただの幼馴染で、あいつの目には綾香しか映ってなかったんだもんね
浩輔:……
奈央:近すぎるっていうのも問題よね。こんなに近くにいたのにな……
浩輔:そうだな
奈央:(笑って)ごめん、せっかくのお祭りなのにこんな暗い話しちゃって……
浩輔:いや
奈央:さて! 私たちもお祭り楽しもう!
浩輔:待て(奈央の腕を掴む)
奈央:え?(バランスを崩す)きゃっ
浩輔:(奈央を受け止めて)っと、悪い
奈央:ううん、ごめん、支えてくれてありがとう。浴衣って動きにくくて。あ、もう大丈夫だよ?
浩輔:……鈍感なのは大山もだ
奈央:え?
浩輔:お前も鈍感だな
奈央:どういうこと?
浩輔:俺、何も思ってない人と一緒に祭りに行こうとなんて思わないけど
奈央:え?
浩輔:もちろん、みんなでって誘われても断る。それから、何とも思ってないやつを抱きとめたりもしない
奈央:え、えっと……
浩輔:俺だってずっと見てたんだよ。大山の目には和樹しか映ってなかったけどな
奈央:……うそ……
浩輔:嘘じゃない
奈央:ご、ごめん……
浩輔:別にいい。気付いてほしかったわけじゃないから
奈央:え?
浩輔:大山が好きな人と幸せになれるんならそれでいいと思ってた。その相手が俺じゃなくても
奈央:加藤君……
浩輔:でも、やめた
奈央:え?
浩輔:大山のそんな顔、見たくない。だから、他の誰かじゃなくて、俺がお前を幸せにする
奈央:でも……
浩輔:わかってる。すぐになんて言わない。ゆっくりでいいから俺のことを見てほしい。和樹の友だちとしてじゃなく、男として俺を見て
奈央:……いいの?
浩輔:何が?
奈央:だって、私、まだ……
浩輔:いい。正直言うと嫌だし、腹も立つけど、それでもいい。俺がお前を守りたいって思ったんだ。だから、今は俺に甘えろ
奈央:でも……
浩輔:じゃあ、こうしよう
奈央:何?
浩輔:卒業まで
奈央:え?
浩輔:卒業まで、大山が俺のことを好きにならなかったら、この関係はそこで終わり。ただの知り合いに戻る
奈央:……
浩輔:もし、好きになってくれたら、そしたら、またそこから始めよう。どうだ?
奈央:どうだ、って……
浩輔:まぁ、返事は聞かないけどな
奈央:え?
浩輔:俺、全力で大山のこと好きにさせにいくから
奈央:……(笑って)本当にもう……
浩輔:ん?
奈央:流石、加藤君だね……あの馬鹿の友だちなだけあるわ……
浩輔:それは、誉め言葉か?
奈央:うん、誉め言葉として受け取って下さい
浩輔:わかった。さてと、俺たちも祭り楽しむか
奈央:え?
浩輔:あとであの二人と合流するんだろ?
奈央:あぁ……
浩輔:大山が元気な姿見せてやらないとあいつら心配するだろうしな
奈央:確かに鈍感なのに、心配性だからね
浩輔:あぁ
奈央:じゃあ、私たちも夏祭り、楽しまなきゃね
浩輔:そうだな。でも、無理はするなよ
奈央:……うん、ありがとう、加藤君
浩輔:浩輔
奈央:え?
浩輔:名前、呼んでほしい
奈央:え?
浩輔:和樹だけ名前で俺だけ苗字は腹が立つ
奈央:……でも……
浩輔:奈央?
奈央:っ! 今、名前!
浩輔:言っただろ、本気出すって
奈央:……
浩輔:ほら、早く言わないと、こうやって……(奈央の手を取って恋人つなぎで握る)
奈央:あ! 手……
浩輔:今日一日ずっと恋人つなぎでお祭り回るぞ
奈央:それは!
浩輔:ん?
奈央:……こ、浩輔君……
浩輔:ん、まぁ、本当は呼び捨てがいいが今回は合格。(恋人つなぎから普通のつなぎ方にする)さぁ、行くぞ
奈央:え? ちょっと、手!
浩輔:ん?
奈央:名前ちゃんと呼んだじゃん!
浩輔:俺、手をつなぐのやめるとは言ってないけど?
奈央:え!
浩輔:今日は人込み多いし、このままつないだまま
奈央:で、でも!
浩輔:ダメ。絶対に放さないから、奈央、諦めて
奈央:……(小声で)ばか……
浩輔:ん?
奈央:な、なんでもない! あぁ、もう、行くよ!
浩輔:(笑いながら)あぁ
―幕―
2020.08.21 ボイコネにて投稿
2022.11.25 加筆修正・HP投稿
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