僕だけが知っているあなた


【詳細】

比率:男1:女1

現代・ラブストーリー

時間:約8分~10分


【あらすじ】

とあるカップルの日常です。

いつもしっかり者の麻衣はたまに抜け殻のようになってしまいます。

それを優しく包み込む恭介。


本当に心を許した人にしか見せない恋人の素顔。

あなたは知っていますか?



【登場人物】

恭介:(きょうすけ)

   麻衣の彼氏。

   年下で麻衣の会社の後輩でもある。彼女のことが大好き。


麻衣:(まい)

   恭介の彼女。

   普段はしっかり者だが、たまに抜け殻のようになってしまう。




●麻衣の部屋・リビング・昼

   ソファでボーっとしている麻衣。

   そんな彼女の様子をキッチンから料理をしながら眺めている恭介。


恭介:(M)僕の彼女は頑張り屋さんです。仕事も家事もきっちりこなします

   僕は彼女と付き合ってから一度も彼女の部屋が荒れているのを見たことがありません

   仕事では先輩に信頼され、後輩に頼られて、どんなことがあっても笑顔を絶やしません

   彼女が職場で暗い顔をしているところも見たことがありません

   人に優しく、自分に厳しくを普段からやってののけてしまう、稀有な人です


麻衣:(ため息が無意識に零れる)


恭介:(M)だから、たまにこうなります


麻衣:(ため息)

恭介:麻衣さん

麻衣:ん?

恭介:お昼は何食べますか?

麻衣:お昼?

恭介:うん

麻衣:(少し考えて)……いらない……

恭介:ダメです

麻衣:……食べたくない……

恭介:本当に?

麻衣:……

恭介:……じゃあ、僕が食べたいもの作るんで、一緒に食べてくれますか?

麻衣:……うん……

恭介:(微笑んで)ありがとう


恭介:(M)付き合う前は麻衣さんにこの一面があることなんて知らなった

   麻衣さんと僕は会社の先輩後輩で、それこそ僕が入社した時から面倒をみてくれた大先輩だ

   職場での彼女は本当に素敵で、僕もいつかこんな先輩になるんだって憧れていた

   それで、ずっと彼女のことを追いかけていて、いつの間にか気が付いたら先輩としての好きじゃなくて、女性として好きになっていた

   だから、告白して……何回も断られたけど、諦めきれなくて何度も想いを伝えた

   その結果、最後には麻衣さんが苦笑しながら頷いてくれた



●麻衣の部屋・キッチン

   料理をしている恭介。


恭介:ふふふ、懐かしいな

麻衣:……ん(恭介の腰に抱き着く)

恭介:あれ、麻衣さん? どうしたんです?

麻衣:……なんでもない……

恭介:ソファにいなくていいの?

麻衣:……いい

恭介:そっか

麻衣:……ん(さらに強く抱き着く)

恭介:ん? 何かあったんですか?

麻衣:……

恭介:(察して)……寂しかった?

麻衣:……ん……

恭介:そっか。じゃあ、このままお料理しますね

麻衣:……それはダメ……

恭介:なんでです?

麻衣:……迷惑になっちゃうから

恭介:迷惑なんかじゃない。僕がそうしててほしいんです。ダメですか?

麻衣:……ダメじゃない

恭介:(優しく微笑んで)じゃあ、このままでいてください。でも、包丁使うときとか、火を使うときはちょっと離れてくださいね

麻衣:……わかった

恭介:ふふふ、ありがとう


恭介:(M)何がきっかけでこうなるか具体的には分からないけど、たまに発動するわがままで甘えんぼうな可愛い麻衣さん

   きっといろいろなものが溜まってしまってこうなるのだろう

   本人はこんな姿を見せるなんて嫌だって言ってるけど、僕としては嬉しい

   だって、誰にも見せないような顔を見せてくれるなんて、恋人としての特権だ

   それに、僕にそんな姿を見せてくれるってことは、それだけ心を許してくれている証だと思うから……



●麻衣の部屋・リビング

   二人、昼ご飯を食べ終える。


麻衣:……ごちそうさまでした

恭介:お粗末様でした。どう? おいしかった?

麻衣:うん

恭介:ならよかったです

麻衣:……ありがとう

恭介:ん?

麻衣:……ご飯、私の好きなものだった

恭介:(優しく微笑んで)僕も好きなんです

麻衣:(嬉しそうに微笑む)

恭介:……やっぱり、好きだな

麻衣:え?

恭介:麻衣さんの笑った顔、すごく好きです。心が温かくなります

麻衣:……頑張る

恭介:頑張らないでください

麻衣:……

恭介:僕は麻衣さんの笑顔も好きですけど、笑顔だけが好きなんじゃないんです

麻衣:え?

恭介:怒ってる顔もかわいいし、困ってる顔もかわいいです。そして、泣いている顔は愛おしいです

麻衣:え?

恭介:僕が守ってあげなきゃって、心の底から思います

麻衣:……

恭介:だから、我慢しないでください

麻衣:……ん

恭介:(腕を広げて)ほら、こっちです

麻衣:……ん


   麻衣、恭介の腕の中に納まる。恭介、そっと麻衣を抱きしめる。


恭介:麻衣さん、泣いてもいいんですよ。ここには僕しかいません

麻衣:(涙がこぼれる)

恭介:麻衣さん、大丈夫です

麻衣:(声を押し殺して泣いている)

恭介:いっぱい泣いて、スッキリしちゃいましょう

麻衣:……恭介くん……

恭介:何ですか?

麻衣:ありがとう


恭介:(M)そう言って、麻衣さんは僕の腕の中でいっぱい泣いてくれた

   はらはらと零れる麻衣さんの涙は本当に綺麗で、愛おしく思えた

   いつまでもこの人を守っていきたいと思った

   しばらくたつと、腕の中の温かさが重心を変える。その重さに僕は麻衣さんが眠ったことに気が付く

   そっと涙を拭いてゆっくりとベットへ運ぶ



●麻衣の部屋・寝室

   恭介、麻衣をベッドに連れて行き優しく寝かせる。


恭介:(あくびをする)なんだか、僕も眠くなっちゃったな……


恭介:(M)時計を見ると時間はまだ午後の時間を指していた

   お昼寝にはちょうどいい

   きっと起きたら、いつもの大人な麻衣さんが隣にいる

   それはちょっと寂しくもあるけれど、でも、やっぱり僕はいつもの麻衣さんが好きだ

   明るい笑顔で僕を見つめてくれる麻衣さんが……


恭介:(優しく囁くように)おやすみなさい、麻衣さん。起きたらまたいっぱい甘やかしてちゃいますね


恭介:(M)目が覚めたら何よりも先に麻衣さんを抱き締めよう。きっと彼女はくすぐったそうに笑うんだ


麻衣:もう、どうしたの、恭介君


恭介:(M)僕の好きな柔らかな笑顔と優しい声で



―幕―




2020.10.10 ボイコネにて投稿

2022.11.30 加筆修正・HP投稿

紅く色づく季節

こちらは紅山楓のシナリオを投稿しております。 ご使用の際は、『シナリオの使用について』をお読みくださいませ。 どうぞ、よろしくお願いいたします!

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