【詳細】＊こちらのシナリオは男性二人のシナリオとなっております
比率：男２
オフィス・日常・ラブストーリー
時間：約20分
【あらすじ】
夕方のオフィス。
一人残り仕事をする要。彼の机には数本のブラックコーヒーの空き缶。
そんな彼に一服から帰ってきた仁が声をかける。
「また煙草ですか？」
「おぉ、怖い怖い。相変わらず煙草嫌いなのな」
「僕は平等に、煙草を吸っている人が嫌いなので」
＊こちらのシナリオは、『私が煙草を嫌いなのは』の性別変更版です。
男性二人のBLシナリオとなっております。
流れは『私が煙草を嫌いなのは』と同じですが、性別変更に伴い内容を一部変更しております。
男女二人のシナリオをお探しの方は『私が煙草を嫌いなのは』をご利用ください。
【登場人物】
大蔵 要：（おおくら かなめ）
二十代。
仕事が出来るしっかりとした人。
一昨日恋人にふられたばかり。
鳴海 仁：（なるみ じん）
三十代。
煙草をよく吸う。
輩の面倒見はいいが飄々としていって掴みどころがない人。
要に恋人がいることは薄々気が付いている。
●オフィス・夕方
一人、デスクに向かって仕事をしている要。デスクの上には数本のブラックコーヒーの缶が置いてある。
仁：ん？ 大蔵？
要：はい？
仁：今日は珍しく眼鏡なんだな。一瞬、誰かわからなかった
要：そうですか。お疲れ様です、鳴海先輩
仁：おぅ、お疲れ
要：（煙草の臭いが鼻に届き）……また煙草ですか……
仁：おぉ、流石。大蔵は今日も鼻が利くな
要：人を犬みたいに言わないでください。流石にこの距離なら誰でも煙草を吸ってきたのはわかります
仁：悪い悪い
要：（ため息）いつも思いますけど、それ絶対、悪いと思ってませんよね？
仁：そんなことないぞ？
要：そうですか。じゃあ、いつになったら煙草やめるんですか？
仁：ん～？ もうちょっと値上がりしたら？
要：それ、今の煙草の値上がりの前にも言ってましたよね？
仁：そうだっけ？ まぁ、俺、独り身だからさ。値上げって言っても、まだ買える範囲なんだよね
要：……ご家庭持ちのお小遣い制男性社員にフルボッコにされてしまえ
仁：おぉ、目が怖い怖い。大蔵は相変わらず煙草嫌いなのな？
要：嫌いですね。それを分かっていて煙草を吸った後に僕に声をかける鳴海先輩もなかなかに
仁：おいおい、俺も標的になるのか？
要：なりますね
仁：新人の頃から面倒見てやってるのにか？
要：それとこれとは話が別です。僕は誰であっても平等に煙草を吸ってる人が嫌いなので
仁：いつものことながらブレねぇな大蔵は……ある意味凄いな
要：お褒め頂き光栄です
仁：いや、褒めてねぇよ
要：（ため息をつき）それで、僕に何の用ですか？
仁：いや、特に用があったわけじゃないんだが……
要：そうですか。では、仕事に戻りますね
仁：待て待て待て！
要：何ですか？
仁：何って……今日ってお前一人で残業なの？
要：そうですけど？
仁：こんな寒くて今にも雪が降りそうって日に？
要：はい。寒かろうが雪が降りそうだろうが、オフィスの中は暖かいですから、関係ありません
仁：そりゃそうだが……帰りとか、遅くなったら危ないだろ？
要：そうですか？ いつものことなので気にしたことなかったです
仁：おい、ちょっと待て、いつも？
要：はい
仁：高宮はそれ知ってるのか？
要：知ってるんじゃないですか？
仁：……あいつ……
要：仕方ないじゃないですか。高宮先輩、今プライベートが大変なんですから
仁：けどなっ！
要：僕は別にかまいませんよ？ 寧ろ、そっちがダメになってこっちに八つ当たりされる方が迷惑です
仁：……あいつ、八つ当たりするのか？
要：正確には僕自身に八つ当たりをするわけじゃありませんが
仁：はぁ？
要：ご本人曰く、「酒に八つ当たりするんだ！」って言って飲んで、翌日いろんな意味で大変なことになってますね
仁：……
要：めんどくさいですよね
仁：あぁ……我が同期ながら情けない
要：なので、積極的に進んで仕事をしています
仁：なるほどな……。馬鹿同期が迷惑かけている立場で俺が言うのもなんだが、仕事熱心なのはいいがあんまり無理すんなよ？
要：……無理はしていません。僕は仕事していた方が落ち着くんです。先輩と違って
仁：おいおい、人聞きが悪いな。まるで俺がさぼり魔みたいに……
要：違うんですか？
仁：……
要：（ため息をついて）そこはたとえ身に覚えがあったとしても反論したほうがいいと思いますけど？
仁：そう思うなら、そんなこと言うなよ！
要：事実は事実なので
仁：ちゃんと自分の仕事はこなしてるっての
要：でも、事実は事実なので
仁：（ため息）いつもながら、大蔵の言葉には鋭さがあるよな
要：お褒め頂き……
仁：（遮って）だから褒めてねぇっての！
要：そんなことより、鳴海先輩。今日の分のご自分のお仕事はもう終わったんですか？
仁：ん？ あぁ、あとちょっとやったら終わりだ
要：じゃあ、さっさと終わらせて帰った方がいいんじゃないですか？ 雪降られますよ？
仁：おぅ、そうだな～。雪に振られたらかなわん！ ぼちぼちやるか
要：そうしてください
仁：大蔵も程々にしとけよ？
要：はい
仁：（ため息）お前、程々にする気はねぇな。ったく……お前も高宮みたく恋人でも作ったらいいんじゃないか？
要：っ……
仁：そしたら早く……って、大蔵？
要：……
仁：どうした？
要：……別れました
仁：え？ いつ？
要：一昨日
仁：……お前、やっぱり恋人いたのか……
要：はい
仁：……すまん
要：別に鳴海先輩が悪いわけじゃないですから
仁：いや、これは俺が無神経だった。すまない……
要：いえ、僕のプライベートなんて話さなければわかるわけありませんから。じゃあ、僕は仕事に……っ……
仁：大蔵？
要：……なんでもありません……
仁：（机の上のコーヒーの缶を見て）……大蔵……
要：何ですか？
仁：……お前、今日はもう仕事やめとけ
要：……何言ってるんですか？
仁：（呟くように）もっと早く気が付くべきだった……
要：鳴海先輩？
仁：その仕事、急ぎじゃないんだろ？ だったら、今日は帰るぞ？
要：は？
仁：無理はするな
要：無理なんてして……
仁：（遮って）してないって言えないよな？ お前、顔色悪すぎ
要：……
仁：眼鏡で上手く誤魔化してるけど、顔白いし、瞼も腫れてる
要：そ、そんなこと……
仁：目もウサギみたいに真っ赤だし、手元にはブラックコーヒーの缶が三つ
要：……
仁：お前、寝てないだろ？
要：……そんなことは……
仁：人生の先輩をなめんなよ？
要：……
仁：（要のカバンを持って）ほれ、帰るぞ？
要：あ、鳴海先輩！ っ！
要、立ち上がるがめまいがし、その場にしゃがみ込む。
仁：大蔵！ （近づき）……大丈夫か？
要：だ、大丈夫です。ちょっと体に力が入らなくて……
仁：……すまん。俺が急に立ち上がらせたらからだな。ほれ、俺が支えるから身体ゆっくり預けてみ？
要：……ご迷惑ですから……
仁：迷惑なんかじゃない。今から下にタクシー呼ぶから、来るまでちょっと寝とけ
要：……嫌です
仁：大蔵
要：眠ったら思い出しちゃう……一人で立っていられなくなる……だから……
仁：大蔵？
要：一人でも立ってなきゃ、そうじゃなきゃ、僕は……
仁：……寝ろ（手で目元を覆う）
要：やっ！ 鳴海先輩！
暴れる要の肩を抱き、無理矢理体重を預けさせる仁。
仁：落ち着け。大丈夫だ。俺が傍にいてやるから。目が覚めても傍にいるから。だから安心して寝ろ
要：……なるみ……せんぱ……い……
仁：大丈夫だ。そのまま眠気に身を委ねろ
要：せんぱ……い……（意識を手放す）
仁：眠ったか？ ったく、心配かけさせやがって……いや、もっと早く俺が気付くべきだったな。ごめんな、要
●仁の家・夜中
大きめのソファに寝かされている要。傍らには仁が本を片手に座っている。片手は要に握られている
要：……ん……
仁：お？ 起きたか？
要：……なるみ……せんぱい？
仁：おう
要：……え？ っ！（急に起き上がる）……あっ……
仁：馬鹿！ 急に起き上がるな
要：……すみません
仁：とりあえず、横になっとけ
要：……はい……（ゆっくりと横になり）あの、ここは……
仁：そう、俺ん家。皆とやった宅飲み以来だから懐かしいだろ？
要：……ですよね
仁：拉致るつもりはなかったんだが、あの後、タクシー来たからって起こしてもお前起きなかったから。とりあえず連れてきた
要：……すみません……
仁：気にするな
要：（はたと気が付き）……あの、今って何時ですか？
仁：深夜の一時
要：嘘！
仁：本当。こんなことで嘘ついたって仕方ないだろ？
要：僕、ご迷惑を……（起き上がろうとする）
仁：（制して）だから、まだ寝てろっての
要：でも！
仁：もう終電もないだろ？ 明日休みだし、ゆっくりしてけ
要：……すみません……
仁：お前が謝る必要なんてないだろ
要：え？
仁：俺がお節介でやったんだ。大蔵が気にすることじゃない
要：……はい
仁：よく眠れたか？
要：え？
仁：ちゃんと眠れたか？
要：はい
仁：ならよかった。何回かうなされたから心配だったんだぞ？
要：……
仁：で、ずっと何か探してるみたいに手を動かしてさ。手ごろな俺の手を探し当てたらギュッと握ってさ
要：え？
仁：……ずっと離してくれなかったから、困ったんだぜ？
要：……ずっとって……
仁：寝てる間。まぁ、覚えてないだろうけどな
要：す、すみませんでした！
仁：気にすんな。それにしても、大蔵の手って小さくて折れそうなくらい細いのな
要：え？
仁：そのくせ、握る力は強いくて
要：すみませんでした！
仁：（軽く笑い）冗談はさておき……大蔵、何があった？
要：……
仁：人に話すのは嫌かもしれないが、俺としてはまた今回みたいにお前が無理して倒れられたら心臓に悪いからな
要：……
仁：今回は俺だったらいいが、もしも他の奴の前でなんてことがあったら……
要：え？
仁：いや、何でもない。それで？
要：……
仁：話せるところまででいい。話して楽になれ
要：……僕、一昨日、恋人に振られたんです
仁：あぁ
要：急に呼び出されて。指定の場所に行ったら、恋人の隣には知らない人がいて。こいつと付き合うことになったから別れてくれって。いつものように煙草を吸いながら言ったんです
仁：……そうか
要：その人はすごく綺麗で。僕なんかじゃ太刀打ちできない程の人で。悲しいのに、月とすっぽんってこういうことを言うんだなってどこか他人事で考えてしまう自分もいて
仁：……
要：「仕事しか取り柄の無いお前よりもこいつの方が魅力的だ」、「お前の良い所なんて、家事が出来てちょっと給料がいいところだろ」って。「いつも見下されてるみたいで息が詰まった」って言われて
仁：……
要：本当は分かっていたんです。一年位前から、態度が素っ気なくなって、一緒にいる時間が減っていることに。でも、気付かないふりをしていた……だって、本当に好きだったから……
仁：……っ！……
仁、少し乱暴に要を抱きしめる。
要：な、鳴海先輩？ 何してるんですか？
仁：泣け
要：え？
仁：思いっきり泣け。泣いて全部忘れろ。そんな奴のこと
要：……
仁：大蔵、お前は悪くない。悪いのはその屑みたいな奴だ。自分を責める必要なんてない
要：……でも……
仁：自分の自尊心を傷つけたくなくてお前に当たり散らしただけの最低な奴だ。忘れろ
要：……僕……僕は……
仁：お前の良い所は俺がいっぱい知ってる。そんな奴よりももっとお前を見てきたんだ。その俺が保証する。大蔵、お前は悪くない
要：……鳴海先輩……
仁：ほれ、我慢しなくていい
要：……
仁：よく頑張ったな
要：……っ……（堰を切ったように泣く）
数時間後。
要：……本当にご迷惑をおかけしました
仁：気にするな。すっきりしただろ？
要：……はい
仁：ならいい。さて、そろそろ寝るか。いくら休みだって言っても夜更かしのしすぎはよくないからな
要：……
仁：あぁ、お前はベット使っていいぞ？ 俺は、ソファで寝るから
要：……鳴海先輩
仁：ん？
要：……ありがとうございます
仁：おう
要：それで……
仁：ん？ どうした？
要：……
仁：大蔵？
要：……本当なら聞き流して、何も聞かなかったことにするのがいいって分かっているのですが……聞いてもいいですか？
仁：おう、何だ？
要：……僕をずっと見てきてくれたって……
仁：！
要：それって……
仁：（ため息）
要：す、すみません！
仁：いや、これはお前に対するため息じゃなくてな……俺、そんなこと言ってたのか……
要：……はい
仁：……俺もまだまだだな……
要：え？
仁：お前にさらけ出させておいて俺だけ言わないのは違うよな
要：鳴海先輩？
仁：正直に言う。俺はお前に恋人がいることは知っていた
要：……
仁：確信はなかったけどな。街中で何回かお前と奴が一緒に歩いているのを見かけたから。そんな時のお前は幸せそうに笑っていて。お前が幸せならそれでいいって俺は思っていた
要：……
仁：大蔵
要：……はい
仁：きっとお前が予想している通りだよ。でもな、今お前が弱ってるときに俺はその先を言う気はない
要：……鳴海先輩
仁：だから、しばらくはいつもの距離感でいさせてくれ
要：……わかりました
仁：でも、俺の気持ちは変わらないから。何かあったら俺を頼ってくれ
要：それは……
仁：もちろん、先輩としてな。あぁ、でも……もしも、今回みたいに怖くて眠れないってなったら俺に言ってほしい。俺が傍にいる。俺はお前が立ち直って次の恋人を作って安心するまで、この立場を譲る気はないから
要：……先輩。でも、それじゃ、甘えすぎなんじゃ……
仁：いいんだよ。俺がお節介でやってるんだ。お前は気にせずにもっと甘えろ。一人でなんでもかんでもしょい込みすぎなんだよ
要：……はい。すみません
仁：そこはすみませんじゃないだろ？
要：……ありがとうございます
仁：おう。それにな
要：はい
仁：俺はそこまでいい奴じゃねぇんだよ
要：え？
仁：お前に優しくして、少しでも俺の好感度が上がればいいだなんて考えてるずるい奴なんだよ
要：……先輩
仁：てなわけで、おやすみ
要：……はい、おやすみなさい
―幕―
2023.01.29 性別変更・加筆修正版投稿
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Special Thanks：アーちゃん様
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