【詳細】
比率:男2:女2
現代・ラブストーリー
時間:約20分
【あらすじ】
大学時代からの仲良し四人組の基樹、武蔵、志穂、理沙。
理沙からの急な誘いで一緒に家で飲んでいた志穂だが、彼女の様子がいつもと違うことに気が付いて……
お酒と隠し事はほどほどにしないとね。
【登場人物】
理沙:田所 理沙(たどころ りさ)
20代後半。
武蔵の彼女。面倒見がよく普段は周りの後輩の面倒をよく見ている。
武蔵に対しては強がってしまうことが多くて、後々後悔することもしばしば。
武蔵:原 武蔵(はら むさし)
20代後半。
理沙の彼氏。仕事をきっちりこなす完璧主義な人。
故に、自分のことでいっぱいいっぱいになってしまうこともしばしば。
基樹:安藤 基樹(あんどう もとき)
20代後半。
志穂の彼氏。彼女の志穂を溺愛中。
空気を読んで素早く行動することは出来るが、乙女心を読むのはちょっと苦手かも……
志穂:新村 志穂(にいむら しほ)
20代後半。
理沙とはまた違ったタイプの面倒見のいいお姉さん気質。
おっとりしていて面倒ごとに巻き込まれることもしばしば。実は酒豪。
●志穂の部屋・リビング・夜
テーブルの上には空の酒の缶や瓶、おつまみが並び、理沙が突っ伏している。
基樹:うわっ、汚っ……足の踏み場もないな……
志穂:……ごめん……
基樹:いや、これは志穂のせいじゃないだろ?
志穂:ま、まぁ……
理沙:(酔って)し~ほ~。もっと飲むよ~!
基樹:(ため息をついて)で? これはどういう状況だ?
志穂:(苦笑して)あははは……
理沙:(酔って)あ、もときじゃ~ん! どうしたの?
基樹:「どうしたの?」はこっちの台詞だよ。なに? お前そんなに飲んだの?
理沙:飲んだの! あ、でも、私だけじゃなくて志穂も飲んでるよ~
志穂:う、うん、飲んではいたけれど……理沙の周りにあるのは理沙が一人で飲んだやつだからね?
理沙:あれ~? そうだっけ?
志穂:うん
理沙:そっか。まぁ、いいや。だって、おいしいお酒だし、志穂のおつまみもおいしいし、明日休みだし!
基樹:……
志穂:(苦笑して)……こんな状況です
理沙:です!
基樹:うん、わかった。全部志穂に聞くから酔っぱらいはちょっと静かにしとけ
理沙:え? 酔っぱらい? 誰のこと?
基樹:お前以外にいるか!
理沙:私、酔ってないよ? ちょっとふわふわして、楽しいだけだよ?
基樹:それを酔っぱらってるって言うんだよ!
理沙:(楽しげに笑う)あはははは~
基樹:……
志穂:……ごめんね、基樹、巻き込んで……
基樹:いや、大丈夫。これは、志穂のせいじゃないだろ。で、どうしたんだ?
志穂:う~ん……私も詳しくは分からないんだけど……急に理沙から連絡あって、一緒に朝まで飲もうって言われて。いつもの感じで楽しく飲むのかな~って思ったら、どんどん飲むペースが早くなるし。理沙、明日お仕事お休みだって言ってたからいいかなって思ってたんだけど、流石にこれはなんかいつもと違うなって思って……
基樹:なるほど、で、俺が召喚されたわけだ
志穂:はい。ご迷惑をおかけします
理沙:あぁ! もときが志穂のこといじめてる!
基樹:うるさい、酔っぱらい! お前がよくわからんことになってるから俺が召喚されたんだよ!
理沙:しょうかん?
基樹:そう!
理沙:いつ?
基樹:今!
理沙:どうやって?
基樹:ど、どうやってって……普通に電話で……
理沙:(食い気味に)さっき?
基樹:さ、さっき
理沙:あぁ~!(机に突っ伏す)
基樹:な、なんだよ
理沙:志穂はいいな~、基樹が彼氏で
志穂:り、理沙?
理沙:私なんて、私なんて……(泣き出す)うわ~ん!
志穂:ちょ、ちょっと、理沙? 急にどうしたの?
基樹:な、何があったんだよ?
理沙:基樹たちにはわからないわよ!
志穂:理沙……
理沙:このリア充め! 基樹なんて爆ぜてしまえ!
基樹:え? 標的俺だけ?
理沙:うっさい! あたりまえでしょ!
志穂:理沙、本当にどうしたの? 何かあったの?
理沙:……
基樹:とにかく、何があったのか話してみろよ
理沙:……明日の約束、なしになったの……
志穂:えっ!
基樹:明日の約束って?
理沙:……
志穂:理沙、それって本当に? 理沙の勘違いとかじゃない?
理沙:……うん……
志穂:本当に?
理沙:……本当……
志穂:……そっか……
基樹:お、おい、どういうことだ? 俺を置いて話を進めないでくれ!
志穂:……明日って理沙の誕生日なんだよ
基樹:なるほど。で、それとこれと何の関係が……
理沙:(唐突に)武蔵のバカ野郎!
基樹:……
志穂:……こういうことです
基樹:……あぁ、なんか、察したわ……つまり、明日の誕生日に武蔵と過ごす約束をしてて、それが無くなってこんなに荒れていると……
理沙:(遮って)みなまで言うな!
基樹:あ、あぁ、悪い
理沙:もう! 揃いも揃って、男ってなんでこうなのよ!
基樹:え?
理沙:ほんとデリカシーなくて信じらんない!
基樹:わ、悪い……って、これ俺のせい?
理沙:志穂、こんな奴と別れて、私の所においでよ~
志穂:え?
基樹:はぁ?
理沙:私の方が絶対にいいよ? 記念日も誕生日も絶対に忘れないし、もしも仕事で予定入っちゃって当日祝えなくてもちゃんと後日埋め合わせするし!
基樹:……やけに具体的だな……
志穂:理沙、飲みすぎだよ?
理沙:飲ませろ! じゃなきゃやってらんない!
基樹:おいおい……
理沙:あ~あ、もうやめようかな……
志穂:え?
理沙:……しんどいんだわ。こうやって約束すっぽかされるの何回目か分かんないし……
志穂:……理沙
理沙:仕事だってわかってる。わかってるけど……しんどいものはしんどいの……
基樹:(玄関へと続く廊下へのドアに向かって)だとよ。さっさと説明しろ、馬鹿
理沙:え?
リビングへのドアが開く。そこには武蔵が立っている。
武蔵:……理沙……
理沙:む、むさし……? なんで?
基樹:俺が呼んだ
理沙:え? いつ?
基樹:志穂から連絡来たとき。何が何でも理沙のこと、引き取りに来いってな
武蔵:新村、基樹、迷惑かけたな
志穂:ううん、私は大丈夫だよ。それよりも、原君、理沙のこと
武蔵:あぁ、悪かった……
志穂:わかってるならいいよ。この子のこと、悲しませないでよ? 私の大切な親友なんだから
武蔵:わかった
志穂:次なにかやらかしたら……覚えててね?
基樹:(小さな声で)こわっ……
志穂:基樹?
基樹:いえ、なんでもありません
志穂:ね? 原君
武蔵:もうやらかさないよ
基樹:だといいんだがな
武蔵:おい、基樹。お前は俺の味方じゃなかったのか?
基樹:俺は基本的には中立なの。でも、次、俺も巻き込まれたら、その時は……
武蔵:わかったよ、最大限気を付ける。(視線を移して)理沙
理沙:ヤダ!
武蔵:え?
理沙:今日は帰らない! 志穂の家にお泊りするの!
志穂:えぇ!
武蔵:おい、理沙……
理沙:だから武蔵は一人で帰ったらいいよ!
武蔵:なに言ってんだ、帰るぞ
理沙:ヤダ!
武蔵:理沙
理沙:武蔵なんて一人で寂しく自分の部屋に帰ったらいいんだ! そして、明日もさっさと仕事に行っちゃえばいい!
武蔵:おい! 理沙!
理沙:ヤダ! 絶対に帰らない!
基樹:(携帯の着信に気が付いて)あ、もしもし。はい、そうです
志穂:ちょっと、基樹……
理沙:基樹! この状況でどこに電話してんのよ!
基樹:(二人を無視して)わかりました。もうちょっとで行きますので、少し待っててもらえますか。はい、お願いします
理沙:ちょっと!
基樹:おい、武蔵、下にタクシー呼んだから理沙連れてけ
理沙:はぁ?
志穂:い、いつの間に?
基樹:武蔵が来た時にちょちょっとアプリでな。もう終電もないだろ?
武蔵:流石基樹。悪いな
基樹:と思うなら、さっさと帰れ
志穂:も、基樹
武蔵:あぁ、わかった。ほら、帰るぞ
理沙:ヤダ!
基樹:いいから帰れ!
理沙:え? 基樹?
基樹:お前が武蔵と一緒にいたいってのと同じで、俺も志穂と一緒にいたいの。なんなら、今すぐにでもいちゃつきたいの
志穂:ちょ、ちょっと、基樹!
理沙:……
基樹:わかったか?
理沙:……はい
武蔵:基樹、なにからなにまでありがとな
基樹:はいはい。とりあえず、貸し一な。ほれ、帰れ帰れ
武蔵:あぁ。理沙、コート着て。荷物は持つから
理沙:……
志穂:理沙、大丈夫?
理沙:……志穂
志穂:ん?
理沙:……ごめん……
志穂:え?
理沙:せっかく、基樹といちゃいちゃ出来る時間を私が邪魔しちゃって……
志穂:(赤くなって)理沙!
理沙:私、とりあえずこのデリカシーの無い男のうちの一人連れて行くね!
志穂:ちょ、ちょっと?
武蔵:……酷い言われようだな
基樹:自業自得だろ
武蔵:……
理沙:じゃあ、お邪魔しました
武蔵:二人ともありがとうな
志穂:ううん、大丈夫だよ
基樹:この貸しは高いからな
武蔵:(苦笑しながら)わかったよ
武蔵、理沙、帰る。
パタンと閉まるドア。
志穂:帰っちゃったね……
基樹:あぁ。これでやっと平和になる
志穂:(苦笑しながら)基樹。でも、急に二人だけにしちゃって大丈夫だったかな?
基樹:多分、大丈夫だろ
志穂:あ、テキトー
基樹:いや、そんなこと……あるか……
志穂:(苦笑して)あるね
基樹:でも、まぁ、後は当人同士でやってもらって
志穂:確かにね
基樹:(ため息)理沙も理沙だけど、武蔵も武蔵だよな。こんなことになって別れでもしたら、本末転倒だろうが
志穂:ん? どういうこと?
基樹:あいつ、アレを買うために仕事めちゃくちゃ頑張ってたんだぜ
志穂:アレ?
基樹:そう、アレ。やっぱり、彼女さん方はいつの日かほしいって思うもんなんでしょ?
志穂:(察して)あぁ。なるほどね~。原君、頑張ってるじゃん
基樹:だろ? まぁ、なんの説明もしてないあたりが詰めの甘さというか、あいつらしいというか……
志穂:(苦笑して)それはそうだね
基樹:言っておけば、今回、ここまで拗れなかったのにな
志穂:でも、それが男の子でしょ?
基樹:ん?
志穂:好きな人にかっこいい所見せたいものなんでしょ?
基樹:(苦笑して)あぁ。俺の彼女はいろいろわかってくれてて助かるよ
志穂:どういたしまして?
二人、笑い合う。
基樹:さて、俺たちはあいつらの仲直りを願いながら片付けでもするか
志穂:え、手伝ってくれるの?
基樹:当然。もとからそのつもりだったから
志穂:ありがとう
基樹:その代わり……
志穂:ん?
基樹:終わったら、とびっきり甘いご褒美頂戴ね
●武蔵の家
玄関のドアを開け、中に入る二人。
理沙:……
武蔵:ほら、あがれよ
理沙:……ここでいい
武蔵:はぁ?
理沙:だから、ここでいいって言ってんの
武蔵:(ため息をついて)馬鹿なのか?
理沙:馬鹿とはなによ!
武蔵:風邪ひくからさっさとリビング行くぞ。暖房付けてあるし、あんだけ飲んでたんだから、水分補給しないと明日の朝大変だろ
理沙:……
武蔵:理沙?
理沙:……帰る
武蔵:はぁ?
理沙:私、帰る!
武蔵:もう終電ないだろうが
理沙:歩いて帰るから!
武蔵:こんな時間にか?
理沙:たった一駅分だもん。いける!
武蔵:いけねぇよ!
理沙:じゃあ、タクシー捕まえる
武蔵:こんな時間じゃ駅前まで行っても捕まんねぇよ
理沙:……
武蔵:おい、理沙
理沙:……何よ?
武蔵:そんなに俺のこと嫌かよ
理沙:……
武蔵:あのな、明日の仕事……
理沙:(遮って)嫌だ!
武蔵:……
理沙:なんで自分の誕生日にわざわざ恋人の部屋で一人寂しい休日を送らなきゃいけないの? なに? なんの拷問? あんたの気配はあるのに、あんたがいない部屋にいろっていうの? そんなの、無理……
武蔵:……理沙
理沙:(泣くのを耐えながら)だから、帰るの。自分の家に
武蔵:っ! 帰らせるかよ!
武蔵、理沙を抱きしめる。
理沙:っ! 離してよ!
武蔵:嫌だ
理沙:離して! 武蔵なんて、武蔵なんて……
武蔵:寂しい思いをさせてごめん
理沙:……
武蔵:約束、破っちゃってごめん。正直に言うと、明日が理沙の誕生日ってこと、すっかり忘れてた
理沙:帰る!
武蔵:最後まで聞いてくれ!
理沙:……
武蔵:でも、昼休みに手帳開いて、そのことに気が付いて……仕事、終わらせてきた
理沙:え?
武蔵:今日中に終わらせられる確信なんてなかったから言えなかったけど。明日、ちゃんと休みになった
理沙:……うそ……
武蔵:本当。だから、明日、ちゃんと理沙の誕生日をお祝いさせてくれ
理沙:……なんでよ
武蔵:え?
理沙:ちょっとでも可能性があるのなら、ちゃんと言ってよ! そしたら、私……
武蔵:言えるかよ。また期待だけさせちまうかもしれないだろ?
理沙:……
武蔵:何回も理沙のこと落ち込ませたくはなかったんだ
理沙:それでも!
武蔵:……あぁ、そうだよな。お前はそういうやつだったよな
理沙:……
武蔵:なぁ、理沙
理沙:なに?
武蔵:明日一日、俺にくれないか? とびっきりの一日にしてみせるから
理沙:……いい
武蔵:え?
理沙:武蔵がいてくれたそれでいい。それ以外、いらないから……
武蔵:……理沙、ありがとう
理沙:ううん。私の方こそごめんね、めんどくさい彼女で
武蔵:めんどくさくなんてねぇよ。俺はどんな理沙でも好きだ
理沙:……武蔵
武蔵:明日さ……ちょっと一緒に行ってほしいお店あるんだけどいいか?
理沙:お店? いいよ。ケーキで買いに行くの?
武蔵:いや、それもそうなんだけど……
理沙:ん?
武蔵:本当はこういうのってサッと用意して渡せたらかっこいいんだろうけど、毎日身に着けることになるし、理沙に好きなデザイン選んでほしいからさ
―幕―
2021.02.08 ボイコネにて投稿
2023.03.14 加筆修正・HP投稿
お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)
Special Thanks:まゆしぃ様
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