【詳細】
比率:男1:女1
現代・学園もの・青春・ラブストーリー
時間:約10分
【あらすじ】
放課後。
信彦が教室に荷物を取りに帰ると、そこには深いため息をつく瞳がいた。
普段明るい彼女からは想像できない姿に驚く信彦。
瞳が落ち込んでいる理由とは……
*『知らないのは……』シリーズのお話です。
一話完結しておりますのでこちらだけでもお使いいただけます。
【登場人物】
瞳:佐竹 瞳(さたけ ひとみ)
高校生。
ちょっとおバカな元気っこ。
吉岡君とカレンちゃんをくっつけようと必死。
信彦の好意に気が付いていない。
信彦:木田 信彦(きだ のぶひこ)
高校生。
瞳のクラスメイト。
一人で空回りしている瞳を生暖かく見守る。
実は、瞳に想いを寄せている。
●教室・放課後
机に瞳が突っ伏している。
瞳:……
信彦:(教室の外の人間に)おぉ、お疲れ~。また明日な!
瞳:(深いため息)
教室に入ってくる信彦。
信彦:あれ? お前、まだ残ってたのか?
瞳:(ため息)
信彦:瞳?
瞳:(深いため息)
信彦:おい
瞳:……
信彦:おい、瞳!
瞳:え? あ、ごめん、呼んでた?
信彦:呼んではないけど話しかけてた
瞳:そっか、ごめん。で、何?
信彦:お前、さっきからずっとため息ついてぼーっとしてるけどいるけど、大丈夫か?
瞳:え?
信彦:(ため息をついて)無自覚かよ
瞳:え、あ、うん、ごめん
信彦:そういえば、朝から元気なかったけど、どうした?
瞳:え? 朝から?
信彦:おう。ここ最近のお前の定番は、『今日もあの二人のこと見守らなきゃ!』って無駄に意気込んでるか、『今日もやっぱりだめだった……』って落ち込んでるかのどっちかなのに、今日はそれがなかった
瞳:……私ってそんなんだったんだ……
信彦:はぁ? 今まで気が付かなかったのか?
瞳:……はい……
信彦:まぁ、すっかり日課になってるからな
瞳:そんなに?
信彦:あぁ、毎日毎日、昼休みになる度に、『今日の作戦を~!』って騒いでるだろうが
瞳:……私、うるさかったんだ……
信彦:瞳?
瞳:……私って、ただの迷惑な子だったのかな……
信彦:本当にどうした? いつものお前らしくないぞ?
瞳:いつもの私ってなに!
信彦:瞳?
瞳:吉岡君やカレンちゃんのことで騒いでるのが鬱陶しいんでしょ? バカみたいなんでしょ?
信彦:そんなこと、俺は……
瞳:(遮って)どうせ私は迷惑で、お節介で、空気が読めなくて、自己満足したいだけの偽善者よ!
信彦:……
瞳:私なんて……私なんて……
瞳、急に立ち上がる。
信彦:瞳?
瞳:もう嫌……
信彦:おい
瞳:帰る!
瞳、乱暴に鞄を持って教室を出ていこうとする。
信彦、瞳の腕を掴む。
信彦:待てよ!
瞳:なによ! 離してよ!
信彦:嫌だ
瞳:離してってば! どうせ、信彦も私のことめんどくさいって思ってるんでしょ!
信彦:思ってねぇよ
瞳:嘘! いつもいつもめんどくさそうにしてるじゃない!
信彦:あれは……
瞳:(遮って)ほら!
信彦:思ってねぇから、とりあえず落ち着けよ!
瞳:嫌だ!
信彦:(ため息)
信彦、瞳の腕をぐっと引っ張って距離を縮める。
瞳:え?
信彦:だから、落ち着けって言ってんの
瞳:え? ちょっと、何してるの?
信彦:何って……近づいて、ちゃんと話すようにしただけだ
瞳:それは分かった! でも、近いから……
信彦:こうでもしないとお前、思考停止しないだろ?
瞳:え?
信彦:ぐるぐるしてたマイナスな思考はストップしたか?
瞳:え? あ、うん……
信彦:じゃあ、これで落ち着いて話せるな
瞳:……あの……
信彦:ん?
瞳:えっと……離れていただけたりしませんでしょうか?
信彦:逃げない?
瞳:え?
信彦:逃げずに俺と話す?
瞳:えっと……
信彦:逃げるなら、このまま俺の質問に答えてもらうけど?
瞳:私に選択権ないじゃん!
信彦:よくわかってんじゃん
瞳:……わかりました! 話します! だから、離れて……
信彦:約束な?
信彦、瞳から少し離れる。
信彦:で? 何があった?
瞳:……
信彦:(ため息)いや、質問変えるわ。誰に何言われた?
瞳:え?
信彦:昨日の放課後、吉岡と立花のことで誰かに何か言われたんだろ?
瞳:どうして?
信彦:そりゃ、朝から話しかけてもずっと上の空、おまけにため息ばっかりついてるし。極めつけはさっきのお前の言葉
瞳:私の?
信彦:あぁ、お前の口から自発的に、「自己満」とか「偽善者」なんて言葉、出てくるはずがない
瞳:……は?
信彦:そんな難しい言葉、お前が使えわけがない
瞳:はぁ? 何? 馬鹿にしてるの?
信彦:(微笑んで)やっといつものお前が出てきたな
瞳:え……
信彦:お前のことを馬鹿になんてしてない。偽善なんて言葉はお前とは無縁の言葉だからな
瞳:どういうこと?
信彦:偽善ってさ、いかにも良い人っぽく見せかけたり、良い行いをしてますよって見せかけることだろ? つまり、その行動の裏には違う考えがあって、それを他人に隠すために行動するってことだろ
瞳:う、うん?
信彦:(少し呆れて)本当にわかってるか?
瞳:う、うん?
信彦:(ため息)で? お前はなんのためにあの二人をくっつけようとしてるんだ?
瞳:なんのためって……それは、あの二人に幸せになってほしくて……
信彦:それは本心で?
瞳:当たり前じゃん!
信彦:だったら、偽善者なんかじゃないだろ
瞳:え……
信彦:だから、誰に何を言われたか知らねぇけど、お前はそんなくだらないことで悩まなくてもいいってことだ
瞳:信彦……
信彦:な?
瞳:……わかった
信彦:まぁ、迷惑で、お節介で、空気が読めないってのは、当たってるかもだけどな
瞳:はぁ?
信彦:違うか?
瞳:……
信彦:反論をどうぞ?
瞳:ぐぬぬぬ……
信彦:(笑って)まぁ、そこがお前らしくていいところなんだけどな
瞳:なによ! 信彦のくせに!
信彦:お? 自覚あんだな?
瞳:なんなのよ!
信彦:じゃあ、あとそこに「鈍感」ってのもついでに付け足しとけ
瞳:はい? 私のどこが鈍感なのよ!
信彦:(苦笑して)それについては自覚無しなんだな
瞳:なによ!
信彦:じゃあ、問題
瞳:え?
信彦:俺はなんでお前を引き留めてまでこんな話をしたでしょうか?
瞳:え? は?
信彦:お前のことあのまま帰すことだって出来たのに、引き留めなかったのは何故でしょうか?
瞳:え?
信彦:(ため息)本当にお前ってやつは……
瞳:え? え?
信彦:まぁ、すぐに答えが出てくるとは思ってない。ここまで待ったんだから、もうとことん待ってやる
瞳:どうゆうこと?
信彦:そういうことだよ
瞳:(顔をしかめて)ん?
信彦:(苦笑して)じゃあ、俺、帰るわ
瞳:え?
信彦:答えは、いつでもいい。あぁ、でも出来るだけ早めにしてくれ
瞳:え? ちょっと!
信彦:じゃあな
信彦、教室を出ていく。
瞳:なによ……あんなことされたら、好きになっちゃうじゃん……
―幕―
2020.11.03 ボイコネにて投稿
2023.04.13 加筆修正・HP投稿
お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)
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