気が付いた想い


【詳細】

比率:男1:女2

現代・学園もの・青春

時間:約15分


【あらすじ】

放課後。

教室で昨日の出来事について悩む瞳。

友人のせつなに助けを求めますが……


*『知らないのは……』シリーズのお話です。

 一話完結しておりますのでこちらだけでもお使いいただけます。



【登場人物】

  瞳:佐竹 瞳(さたけ ひとみ)

    高校生。

    ちょっとおバカな元気っこ。

    吉岡君とカレンちゃんをくっつけよと必死。

    他人の恋愛ごとには敏感なのに自分の恋愛には鈍感。


 信彦:木田 信彦(きだ のぶひこ)

    高校生。

    瞳のクラスメイト。

    一人で空回りしている瞳を生暖かく見守る。

    瞳に想いを寄せている。


せつな:松嶋 せつな(まつしま せつな)

    高校生。

    瞳のクラスメイト。

    大人な雰囲気のお姉さん。年上の彼氏さんがいるらしい。




●放課後の教室


  瞳:どうしたらいいんだよ~(机に突っ伏す)

せつな:今日はどうしたの? 朝からずっとため息ばっかりついてるよ?

  瞳:せつな~!(せつなに抱き着く)

せつな:(瞳を受け止めて)おっと。よしよし、どうしたの?

  瞳:せつな、私はどうしたらいいの!

せつな:何があったの?

  瞳:私、わかんなくなっちゃって……

せつな:吉岡君とカレンちゃんのこと?

  瞳:……違う……

せつな:違うの?

  瞳:……わ、私のことで……

せつな:瞳のこと?

  瞳:(せつなの胸に顔をうずめて)せつな~!

せつな:おぉ。だから、どうしたのよ?

 信彦:(廊下から教室を覗き込んで)お~い、松嶋!

せつな:あ、木田君!

  瞳:(せつなの後ろに隠れる)っ!

せつな:瞳?

  瞳:何でもない!

 信彦:今日の日直って松嶋だったよな?

せつな:うん、そう

 信彦:さっき、職員室の所で美術の川田先生に会って、日直に頼んでたもの早く持ってきてくれって伝えてくれって言われてたんだけど、松嶋何か知ってるか?

せつな:あれ? 確かクラス分のクロッキー帳の提出だよね? 大野君が帰りにまとめて持って行ってくれるって……あっ……

 信彦:ん?

せつな:……棚の上に置いてあったわ

 信彦:……あいつ、部活にかまけて完全に忘れたな……

せつな:(ため息をついて)仕方ない、今から置きに行きますか。怒られないことを願って……(瞳に服を引っ張られて)ん?

  瞳:……

せつな:瞳、どうしたの?

  瞳:あ、えっと……

せつな:とりあえず、川田先生に怒られる前にクロッキー帳の提出だけしてくるから待ってて。すぐに戻って来るから

  瞳:わ、私も行く!

せつな:瞳?

  瞳:だ、だって、せつな一人だけじゃ重いでしょ!

せつな:クロッキー帳だし、そんなに重くないよ?

  瞳:いいから! 私も手伝うの!

せつな:いやいや、大丈夫だから……

 信彦:……じゃあ、俺が行くよ

せつな:え? 木田君?

 信彦:その棚の上にあるやつ持ってけばいいんだよな?

せつな:そうだけど……いいよ、私が行くよ!

 信彦:そんな状況で?

  瞳:……

せつな:瞳?

 信彦:それに川田先生に声かけられたの俺だし。ついでに大野が忘れてましたってチクっとくよ

せつな:(苦笑して)木田君。ごめん、じゃあ、お願いしちゃっていいかな?

 信彦:あぁ

せつな:今度、お菓子あげるね!

 信彦:いいって。元々、大野がやってかなかったのが悪い。もらうとしたらあいつからもらうから

せつな:いいの。私からのお礼ってことで

 信彦:わかった。(クロッキー帳を持って)じゃあ、これ、もらってくな

せつな:お願いします

 信彦:おう


   クロッキー帳を持って去る信彦。


せつな:(信彦を見送ってから)……それで?

  瞳:え?

せつな:木田君と何かあったの?

  瞳:……

せつな:瞳?

  瞳:……せつな、私どうしたらいいの?

せつな:とりあえず、話を聞こうか?

  瞳:……うん。あのね、私、昨日の放課後、ちょっといろいろあって落ち込んでて、そこに信彦が来てくれて、話聞いてくれて……

せつな:うん

  瞳:それで、励ましてくれて……わかんないの……

せつな:瞳?

  瞳:わかんないの! その時の信彦が凄く優しくて、それがずっと頭から離れなくて、何してても目が信彦のこと追っちゃって! 胸がどきどきするし、ギュッてなるし、もうわけわかんない!

せつな:……なるほどね

  瞳:(泣きそうになりながら)せつな~

せつな:う~ん、そのもやもやは解決してあげたいけど、こればっかりは瞳が自分で気が付くしかないことだからなぁ

  瞳:え! せつな、解決できるの!

せつな:たぶんね

  瞳:じゃあ……

せつな:(遮って)ダメ

  瞳:え?

せつな:さっきも言ったでしょ? 私が答えを言うのは簡単だけど、これは瞳が自分で気が付かなきゃ意味がないことなの

  瞳:そんな~

せつな:とは言え、瞳の場合ヒント無しで解決するのは難しそうだから、私から解決するためのヒントをあげよう!

  瞳:ヒント?

せつな:そう。ヒント一つ目、さっき瞳が言ってた胸がどきどきしたり、ギュッってなったりする感覚って嫌な感じのものですか?

  瞳:……嫌じゃありません

せつな:じゃあ、心地いい?

  瞳:う~ん……心地よくはないかな。急に熱くなってくるし、どうしていいか分からなくなっちゃう……

せつな:(少し苦笑して)そっか。瞳にはどきどきを楽しむのはちょっとまだ早かったかな?

  瞳:楽しむ?

せつな:なんでもない。では、ヒントその二、瞳がどきどきするのはどんな時ですか?

  瞳:どんな時?

せつな:そう、誰といるとき?

  瞳:……信彦

せつな:吉岡君にそんな風になったことはある?

  瞳:ない

せつな:じゃあ……川田先生

  瞳:先生はかっこいいって思うけど、思うだけ。あぁ、イケメンだな~って

せつな:目の保養的な?

  瞳:そう!

せつな:(どこかホッとして)……そっか……

  瞳:せつな?

せつな:あぁ、ごめん。じゃあ、木田君といるときだけ、胸がどきどきするんだね?

  瞳:うん。今まではそんなことなかったのに……

せつな:(優しく微笑んで)それは、瞳の中で木田君の存在が変わったからだよ

  瞳:存在が変わる?

せつな:そう、今までとは違くなったの

  瞳:……

せつな:どう? 何か分かった?

  瞳:……わかんない

せつな:(苦笑)まぁ、そうだよね。これでわかってたらもう気が付いてるよね……

  瞳:せつな~

せつな:じゃあ、最後のヒント!

  瞳:最後! 最後なの?

せつな:そう、最後

  瞳:なんで! 私、全然わからないのに……

せつな:でも、すっごく大きなヒントをあげる

  瞳:わ、わかった

せつな:瞳はもし、木田君が他の女の子と付き合ったらどう思う?




●放課後・美術準備室前

   クロッキー帳を提出して部屋を出てくる信彦。


 信彦:……失礼しました


   丁寧にドアを閉める。


 信彦:俺が持ってきて正解だったな。大野、明日覚悟しとけよ……(ため息をつく)にしても、流石にあの反応は凹む。焦りすぎたか? いや、あれくらいしないとあいつには伝わらないだろうし……いや、でも……(ため息)やめやめ。考えがどんどん悪い方にしか行かない……

  瞳:(少し遠くから)信彦~!

 信彦:え? 瞳?

  瞳:(息を切らしながら)よ、よかった、間に合って……

 信彦:どうしたんだ? クロッキー帳ならもう提出したぞ?

  瞳:そうじゃなくて!

 信彦:じゃあ、何?

  瞳:……

 信彦:瞳?

  瞳:えっと、その、あの……

 信彦:うん

  瞳:その……昨日の答え……

 信彦:え?

  瞳:信彦の言ってたやつ。ちゃんと考えたの! せつなにヒントもらっちゃったけど……

 信彦:そうか……

  瞳:あの! せつなはわかってたみたいなんだけど、これは私が出さなきゃいけない答えだって正解は教えてくれなかった。だから、ちゃんと自分で考えた

 信彦:ありがとな

  瞳:え?

 信彦:昨日からずっと考えてくれてたんだろ?

  瞳:なんで? どうしてわかったの?

 信彦:朝からお前の顔見てたらわかる。目元に少し隈もあるし、悩ませちゃったんだろうなって反省してた

  瞳:(食い気味に)そんなことない!

 信彦:瞳?

  瞳:信彦は悪くないの! 

 信彦:(微笑んで)ありがとう

  瞳:……それでね……

 信彦:(優しく遮って)なぁ、瞳

  瞳:な、なに?

 信彦:あんなこと言っておいてあれだけど……やっぱり俺から言わせてほしい

  瞳:え?

 信彦:昨日はお前に意識してほしくてあんな中途半端なこと言っちゃったけど、こういうのってやっぱり俺からちゃんと伝えたいんだ

  瞳:……うん

 信彦:ありがとう。瞳、ずっとお前のことが好きでした。俺と付き合ってくれませんか?

  瞳:私も!

 信彦:……

  瞳:私も信彦のことが好きです!

 信彦:ありがとう。それが、瞳が出してくれた答え?

  瞳:うん。昨日からずっと信彦のこと考えたりすると胸がどきどきしたり、ぎゅってなって苦しくて。それがなんなのか全然わからなかったんだけど、せつなに言われたの

 信彦:なんて?

  瞳:……もしも、信彦が他の女の子と付き合ったらどう思うのって。それを考えたら、信彦が誰かと付き合うなんてそんなの嫌だって思って。そしたら、それが答えだよって

 信彦:流石、松嶋だな

  瞳:だね。ねぇ、信彦

 信彦:ん?

  瞳:これからもずっと一緒にいてね。私、頑張るから

 信彦:どうしたんだ、急に?

  瞳:だって、信彦への答えを出すのに今回はせつなの力借りちゃったから。これからは私の力で頑張りたいなって

 信彦:(微笑んで)瞳はそのままでいいよ

  瞳:え?

 信彦:俺は、ちょっと鈍感で、お節介で、でも何に対しても真剣に向き合おうとするお前のことが好きなんだから



―幕―




2021.01.21 ボイコネにて投稿

2023.04.19 加筆修正・HP投稿

紅く色づく季節

こちらは紅山楓のシナリオを投稿しております。 ご使用の際は、『シナリオの使用について』をお読みくださいませ。 どうぞ、よろしくお願いいたします!

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