【詳細】
比率:1:1
現代・ラブストーリー
時間:約10~15分
【あらすじ】
「相手に受け取る気が無ければ、届かないだろう。どんなに思っていても」
12月。
大学時代の同期の圭太と亜美は二人で楽しく居酒屋で飲んでいた。
酒もすすみ、程よく酔いが回ってきた頃、亜美が圭太に疑問を投げかける。
「クリスマスってなんであると思う?」
【登場人物】
圭太:久川圭太(くがわ けいた)
会社員。亜美とは大学からの付き合い。
亜美:佐藤亜美(さとう あみ)
会社員。圭太とは大学からの付き合い。
●居酒屋・夜
賑やかな店内。半個室の席に向かい合って座る二人。
亜美:ねぇ、圭太
圭太:ん?
亜美:クリスマスってなんであると思う?
圭太:ど、どうした急に?
亜美:ねぇ、どうしてあると思う?
圭太:どうしてって……そりゃ、イエスキリストの誕生日で……
亜美:そうじゃなくて!
圭太:えぇ?
亜美:真剣に答えて
圭太:いや、俺はいたって真面目に……
亜美:圭太
圭太:は、はい
亜美:察して
圭太:はぁ?
亜美:これだから圭太は……
圭太:「これだから男子は」みたいな言い方するな。なんだよ、もう酔ったのかよ
亜美:酔ってない!
圭太:それ、酔ったやつがよく言う台詞
亜美:だったらなんて言えばいいのよ?
圭太:あぁ……知らん。それこそ、雰囲気で察するもんじゃねぇの?
亜美:だったら察しろ!
圭太:なにを? どれを?
亜美:全部!
圭太:おいおい……本当に急にどうした?
亜美:……なんでもない
圭太:なんでもなくはないだろう?
さっきまで「刺身うまっ!」と言って楽しんでた人間の変わりようかよ
亜美:……ごめん……
圭太:ん?
亜美:私、今、めっちゃめんどくさい女になってる……
圭太:別に気にしてねぇよ
亜美:圭太……
圭太:お前がめんどくせぇ奴なのは大学時代から知ってるしな
亜美:うっさい
圭太:ほんで?
亜美:なに?
圭太:どうしたよ?
亜美:……クリスマスに貸し切りの予約入った……
圭太:あぁ、そう言えばお前職場イタリアンの店に移ったって言ってたな
クリスマスだし、お洒落な店あるあるじゃないか。飲食の繁忙期だし、いいことだろ
亜美:……まぁ、店的には……
圭太:だろ。って、店もすげぇな。繁忙期に貸し切りとか
亜美:あぁ……正確にはクリスマスのちょっと前の日
圭太:にしたって、平常時よりも値段高いだろ
亜美:まぁ、特別メニューとかだろうしね
圭太:良い売り上げじゃん
亜美:……
圭太:おうおう、その目やめろって
んで、その貸し切り予約が入って、仕事増えてイライラしてますと
亜美:……半分正解
圭太:正解なんかい! お前、仮にも社員だろうが……
亜美:その貸し切り、結婚おめでとうパーティーなんだって
圭太:結婚おめでとうパーティー? なんだそら? 結婚式の二次会ってことか?
亜美:これから結婚する二人のために大学時代の友人たちが集まってサプライズでお祝いするんだって
圭太:そりゃ、おめでたいな。いいことじゃないか
亜美:……
圭太:はは~ん、わかったぞ
亜美:……なにが……
圭太:お前、確かこの前「彼氏が結婚考えてるのか考えてないのか分からない」って由美にぼやいてたもんな
それでだろ?
亜美:……別れた……
圭太:え?
亜美:だから、別れたの。一か月前に……
圭太:……
亜美:……
圭太:わりぃ……
亜美:別に、終わったことだし
圭太:……そうだよなぁ。それはお前にとっちゃあんまり嬉しくない予約だよなぁ
亜美:別に予約自体はいいの
圭太:いや、無理すんなよ
亜美:本当に。そこら辺はちゃんと分けるわよ
圭太:……そ、そうか……
亜美:そこまで、ならね
圭太:え?
亜美、手元にあったグラスの酒を一気に飲む。
圭太:おいおい、そんなに一気に飲んで大丈夫かよ
亜美:……元カレだったの
圭太:はい?
亜美:だから、元カレだったの!
圭太:え? 何が?
亜美:その結婚おめでとうパーティーの主役の片割れ
圭太:え? ……えぇ!
亜美:……
圭太:それ、マジかよ? 何かの間違いとか。ほら、同姓同名とか
亜美:名前確認した。特別プレートもお願いされてたから、その皿に書いてほしい文言と名前……
音だけなら同姓同名ってこともあり得るだろうけど、下の漢字まで一緒とかなかなかないでしょ
圭太:……それは、まぁ……
亜美:……
圭太:す、すごいな。別れて付き合って、スピード婚かぁ
亜美:違う
圭太:え?
亜美:プレートに何周年とか文言あったから
圭太:……
亜美:つまり、私の方が浮気相手、つまみ食いだったってこと
圭太:……
亜美、グラスの酒を飲む。
圭太:……なんて言ったらいいか……
亜美:別に、気を遣わなくていいよ。ってか、ごめん、こんな重い話して
圭太:いや、それはいいんだけど……
亜美:恋愛ってさぁ、難しいね
圭太:あ、あぁ……
亜美:距離感とか、愛情表現とか
圭太:今回についてはお前に落ち度ないだろ
亜美:でも、もっとちゃんと彼と向き合って話をしてたら……なんか変わったのかなって
圭太:……
亜美:重くなり過ぎないように、彼に釣り合う大人になれるようにふるまってたけど
それじゃ足りなかったのかもね。届かなかったんだよ、私の気持ちは
圭太:……相手に受け取る気が無ければ、届かないだろう。どんなに思っていても
亜美:でも、気付けはしたかもよ? 怪しいって
圭太:それは結果論だろ
亜美:……そうだね。今となっては全部タラればの話
圭太:……
亜美:クリスマスってさぁ、いい子にはプレゼントが~とか言うじゃん
私、いい子だったのになぁ。まぁ、都合のいい子じゃダメか
圭太:……
亜美:ごめん、忘れて。さぁ、飲みなおそう!
圭太:……なんだよそれ
亜美:え?
圭太:悔しくねえの、馬鹿にされて
亜美:え?
圭太:都合の良いように扱われて、捨てられて。ムカつかねぇの?
亜美:そりゃ、イラっとしたし、さんざん荒れたよ? でも、どうしようもないじゃん
圭太:……
亜美:ムカついたからそのパーティーをぶち壊してやろう、破談にさせてやろうとか思わない
だって、そんなことしても結局残るのは虚しさだけなんだもん
圭太:だからっ!
亜美:都合のいい子になるよね、そりゃ。でも、ごめん。私が嫌なんだ
圭太:……それを言われたら、俺は何も言えなくなる
亜美:うん。だから、ごめん
圭太:それに……
亜美:ん?
圭太:俺の好きな奴をそんな風に扱われたことがクソがつくほどムカつく
亜美:え?
圭太:どうせ当人は気が付いてなかっただろうけどな
亜美:え? え?
圭太:相手に受け取る気が無ければ、届かないだろう。どんなに思っていても
亜美:……
圭太:まぁ、お前の場合は気付かなかったってのが正解だけどな
亜美:い、いつから?
圭太:さぁ、いつからだろうな。大学卒業して、みんなで定期的に飲むようになって
それを繰り返していつの間にかってやつ
亜美:……嘘
圭太:嘘でこんなこと言えるかよ。お前からのサシ飲みの誘い、俺が断ったことあったか?
亜美:……ない……です……
圭太:そういうこと
圭太、手元のグラスの酒を飲む。
亜美:えっと……
圭太:ん?
亜美:私……
圭太:あぁ、いい
亜美:え?
圭太:答えとか返事とか、俺、急いでないから
亜美:うん
圭太:ってか、そもそも今日言うつもりも、お前がまだ立ち直れていないときに言うつもりもなかったから
亜美:うん
圭太:忘れろとは言わない。これが俺の本音だから。でも、それに引きずられたりしないでほしい
亜美:……わかった
圭太:ま、言っちまった以上、本気で落としにかかるけどな
亜美:ちょっ!
圭太:んで? お前、その貸し切りのシフトには入るんだよな
亜美:え? まぁ、一応社員だから……
圭太:お前んところ飲食だから指輪とかは仕事中ダメだよな?
亜美:え? うん。他のなら全然大丈夫だけど……
圭太:……わかった
亜美:え? 何が?
圭太:次の休みいつ?
亜美:あ、何もなければ、今度の土曜
圭太:じゃあ、そこ開けといて
亜美:え?
圭太:とりあえず、もうあんたのことなんて一切、これっぽっちも未練なんてないですって突き付けてやろう
亜美:え?
圭太:あ、覚悟しとけよ?
亜美:な、何を?
圭太:俺、お前のこと本気で落としにいくからさ
―幕―
2024.12.19 HP投稿
お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)
Special Thanks:JUN様
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