【詳細】
比率:男1・女1
現代・ラブストーリー
時間:約10分
【あらすじ】
星が綺麗な夜。
車で咲綾を迎えに来た宏之。
二人は思い出の植物園へと向かいます。
誰もいない夜の植物園。二人の目的は……
【登場人物】
宏之:(ひろゆき)
咲綾の彼氏。
一世一代の大舞台に挑む。
咲綾:(さあや)
宏之の彼女。
とある病が原因で明るい時間に外に出るこが出来なくなった。
●夜・咲綾の家の前
車の中で待つ宏之。
咲綾:(ドアを開けて車に乗る)お待たせしました
宏之:こんばんは、咲綾
咲綾:こんばんは、ひろ君。待たせちゃってごめんね
宏之:ううん、大丈夫だよ。俺も今来たところだから
咲綾:あ……
宏之:何?
咲綾:懐かしいなって
宏之:懐かしい?
咲綾:こんなやり取り、いつもしてたなぁって。ほら、駅とかで
宏之:あぁ、そういえば
咲綾:ね? 懐かしいでしょ?
宏之:そうだな。(優しく微笑んで)今日はきっと懐かしいことだらけになるな
咲綾:(嬉しそうに微笑んで)そうだね
宏之:じゃあ、行こうか
咲綾:うん
宏之:シートベルトは締めた?
咲綾:(シートベルトを締めて)うん、バッチリ! 安全運転でお願いします
宏之:もちろん
二人、微笑む。動きだす車。
咲綾:今日はごめんね
宏之:何が?
咲綾:近場なのに車出してもらっちゃって
宏之:いいんだよ。俺が車で行きたいって言ったんだから
咲綾:でも……
宏之:咲綾
咲綾:何?
宏之:今日はどうするんだっけ?
咲綾:え?
宏之:今日はどうやって過ごすんだっけ?
咲綾:……いつもみたいに楽しく過ごす
宏之:うん、そうだね。じゃあ、謝るの禁止
咲綾:う~
宏之:(優しく微笑んで)じゃあ、「ごめん」って言いそうになったら、「ありがとう」に変えて伝えて
咲綾:ありがとう?
宏之:そう。俺は咲綾の「ごめんなさい」って顔よりも、いつもみたいに「ありがとう」って笑顔で言ってくれてる方が嬉しいから
咲綾:……ひろ君
宏之:ね?
咲綾:うん!
宏之:いい子いい子
咲綾:もう! 子ども扱いしないで!
宏之:してないよ?
咲綾:してる!
宏之:してないよ。今だって車を運転してなかったら咲綾のこと抱き締めてキスしちゃいたくてしかたないもん
咲綾:っ!
宏之:ね? 子どもにはそんなことしないでしょ?
咲綾:そ、そうですね!
宏之:(微笑んで)もちろん、今は大事な人の命を預かってるんだからそんな危ないことしないけどね。だから、せめて言葉でこの気持ちを伝えるのだけは許してほしいな
咲綾:……ありがとう
宏之:どういたしまして
しばしの無言。
咲綾:……星、綺麗だね
宏之:そうだね
咲綾:こんなに星が綺麗だなんて、知らなかったな
宏之:確かに。こんな時間に外に出るなんてなかなかなかったからな
咲綾:ね。この時間に起きてても外に出てゆっくり夜空を眺めるなんてしたことなかったな~
宏之:……最近はどう?
咲綾:う~ん……あんまり変わらないかな
宏之:そっか
咲綾:うん。でも、今って便利な世の中なんだなって実感は前よりもしてるかな
宏之:そう?
咲綾:うん。パソコンやスマホ一つで欲しいものとか生活に必要なものが手に入るし、仕事も出来るから
宏之:そうだね
咲綾:(ポツリと)……それでも、本当に欲しいものはもう戻ってこないんだけどね
宏之:咲綾……
咲綾:あぁ、ごめん! って、違っ! えっと……
宏之:(苦笑して)大丈夫だよ。落ち着いて
咲綾:……うん
宏之:じゃあ、それに関しては俺が頑張りましょう
咲綾:え?
宏之:咲綾が、「あの頃はよかった」って思う暇も無いくらい毎日を色鮮やかにしましょう
咲綾:……ひろ君
宏之:なんて、ちょっとクサかったかな?
咲綾:ううん、嬉しい……
宏之:(微笑んで)ならよかった
咲綾:ありがとう
宏之:どういたしまして。今日はそのための一歩だから
咲綾:……うん
宏之:ん? どうした?
咲綾:きゅ、急に緊張してきた……
宏之:(笑って)今更?
咲綾:だって!
宏之:そんなに緊張しないで。いつもの咲綾でいてよ
咲綾:うぅ……
宏之:(苦笑して)もう。じゃあ、そんな咲綾にいいことを教えあげましょう
咲綾:なに?
宏之:俺もすっごく緊張してる
咲綾:え? 嘘?
宏之:こんなことで嘘ついてどうするの?
咲綾:だって、そんな風には見えないよ!
宏之:そりゃ、俺は咲綾よりもちょっと大人だからね。ポーカーフェイスも慣れたもんだよ
咲綾:(少し膨れて)嘘だ!
宏之:本当だって。あぁ、運転してなかったら俺のここ、触ってもらって確かめてもらうのに
咲綾:……本当に?
宏之:当たり前。だって、これから一生に一度の大舞台が待ってるんだから
咲綾:むぅ、やっぱり嘘だ!
宏之:これでも心臓バクバクしてるんだけどな
咲綾:……
宏之:咲綾?
咲綾:……本当に私でいいの?
宏之:俺は咲綾がいいの
咲綾:でも!
宏之:咲綾
咲綾:……何?
宏之:今は言葉でしか伝えられないのがもどかしいけど、俺は本気だから
咲綾:……ひろ君
宏之:だから、あの場所でって思ったんだ
咲綾:……
宏之:オーナーさんたちも凄く驚いてたけど、笑顔で許可してくれたしね。ただし絶対に他言無用でって念押しされたけど
咲綾:そりゃそうだよ。無理を言ってるのはわかってるし
宏之:でも、お幸せにって言ってくれた
咲綾:……うん
宏之:幸せなことだね
咲綾:うん
宏之:俺たちの幸せを願ってくれる人がいるんだから、俺も頑張らないとね!
咲綾:……ありがとう
宏之:うん。さぁ、もうすぐ着くよ。準備はいい?
咲綾:うん
●夜の植物園内
柔らかなランプの灯りに彩られ、幻想的に作られた空間。
咲綾:わぁ……
宏之:……これは
咲綾:綺麗……
宏之:オーナー夫妻のサプライズだね。びっくりした……
咲綾:……ひろ君
宏之:ん?
咲綾:……どうしよう……泣きたくないのに……
宏之:(微笑んで)泣いていいよ
咲綾:でも……
宏之:それは嬉し涙だからいいんだよ。咲綾の心がすっごく嬉しいって叫んでる証なんだから
咲綾:……でも、ちゃんと笑顔でひろ君の言葉に返事をしたい
宏之:咲綾
宏之、咲綾を抱き締める。
宏之:ありがとう
咲綾:ううん
宏之:……俺の気持ち聞いてくれる?
咲綾:うん
宏之:……あぁ、改めてって思うと緊張するな。気のきいたかっこいいことなんて言えないけど……
咲綾:うん
宏之:咲綾、これからも俺の隣にいてほしい。俺とずっと同じ時間を過ごしてほしい
咲綾:……私、こんなだよ? 他の子みたいに明るい時間に外に出られない。普通の子なら出来ることも私と一緒じゃ出来ない。きっと、ひろ君にいっぱい迷惑かける。
宏之:迷惑なんかじゃない。俺は咲綾のことが大好きだから咲綾のことを考える時間が増えるのは嬉しいよ。俺は咲綾と一緒にいられるこれからを大事にしたい
咲綾:ひろ君……
宏之:それに
咲綾:ん?
宏之:未来は何が起こるかわからない
咲綾:え?
宏之:良くも悪くも……ね?
咲綾:……そうだね
宏之:だからこそ、俺は咲綾と一緒にいたい
咲綾:え?
宏之:一緒に何かを乗り越えるなら。一緒に難題を乗り越えられるのは、咲綾しかいないから
咲綾:っ!
宏之:だから、俺とずっと一緒にいてください
咲綾:(俯く)……
宏之:咲綾?
咲綾:ダメ! 今は顔を見ないで!
宏之:え?
咲綾:今の私の顔、ぐちゃぐちゃだから……
宏之:ダメ。嫌だ、見たい
咲綾:ちょっ、ひろ君!
宏之、咲綾の両頬に手を当て上を向かせる。
目を真っ赤にして涙を流す咲綾。
宏之:……綺麗だよ、咲綾
咲綾:嘘つき
宏之:嘘じゃない
咲綾:だって、ボロボロ……
宏之:綺麗な涙だよ
咲綾:……っ……
宏之:ねぇ、咲綾
咲綾:……はい……
宏之:この涙が咲綾の答えだってわかってるけど……返事、聞いてもいい?
咲綾:……
宏之:……
咲綾:……不束者ですが、よろしくお願いいたします…
宏之:うん。こちらこそ、よろしくお願いいたします
咲綾:……
宏之:咲綾、こっち向いて。誓いのキス、しよう
咲綾:……うん
二人、誓いのキスをする。
―幕―
2022.04.21 ボイコネにて投稿 芥子菜ジパ子様主催『箱庭遊戯』参加シナリオ #箱庭遊戯
2022.10.04 加筆修正・HP投稿
お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)
Special Thanks:芥子菜ジパ子様
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