偽りの姿、真実の想い


【詳細】*こちらのシナリオは男性同士の恋が書かれているシナリオでございます

比率:男3

和風・ラブストーリー

時間:約25分~30分



【あらすじ】

時は明治。

とある座組に所属する役者の佐之助はある日、兄と慕う菊次郎の簪を片手に屋敷を飛び出す。

それが己の運命を変えるとも知らずに……



【登場人物】

佐之助:(さのすけ)

    とある座組に所属する役者。

    歳の近い菊次郎を兄と慕いつつも、ライバルでもあると一方的に思っている。

    彼の真似をしてしばしば女形の練習をしている。

    

  肇:和田 肇(わだ はじめ)

    書生。

    恩師の家に居候しながら勉学に励んでいる。

    街中でたまたま出会った女性の姿をした佐之助を見て一目惚れをしてしまう


菊次郎:(きくじろう)

    佐之助と同じ座組に所属する売れっ子の女形。

    佐之助のことは可愛い弟分のように思っている。

    作中に登場する「てる」とは恋仲。


*今作中には登場しませんが、「てる」は女性で、『己の信じる道を』に出てきた登場人物です。

女性であることを隠し、男性としてこの座組にいました。

今作では、性別を座組の皆に明かし、受け入れられています。



●座組が所有する屋敷の縁側・夜

   皆が寝静まった夜中。縁側にて佐之助が空の月を眺める。


佐之助:……俺は……どうしたらいいんだよ……

佐之助:(M)こんな思いは捨ててしまった方が楽だってわかっている。俺のこの想いは誰も幸せにしやしないと。わかっているのに……俺は……




●芝居小屋・昼

   女性の服装で走る佐之助。それを追いかける同じく女性の服装で走る菊次郎。


菊次郎:ちょっと、待ちなさい! こら! さの!

佐之助:へへへ! 遅いよ、菊次郎兄さん! いや、今の姿は、姐さんかな~?

菊次郎:どっちでもいいわよ! 私の簪返しなさい!

佐之助:いいじゃん! 姐さんは他にもいいものいっぱい持ってるんだし! 俺、知ってるよ?

菊次郎:何が?

佐之助:指定が無ければ、いつも決まった簪しかつけてないってこと!

菊次郎:っ! てめぇ!

佐之助:お? やっと役抜けした? 菊次郎姐さん?

菊次郎:誰かさんのおかげでな!

佐之助:でも、今戻っても遅いよ

菊次郎:あぁ?

佐之助:その衣装の着物じゃぁ、俺には追い付けないでしょ?

菊次郎:それはお前だって同じ条件だろうが!

佐之助:残念。俺のは女形トップの菊次郎姐さんとは違って軽いんだよ!

菊次郎:(舌打ちをする)っ!

佐之助:って、ことで! またね~、菊次郎姐さん!

菊次郎:おい、さの! 覚えとけよ!




●街の裏路地

   全力で走った為乱れている息を整える佐之助。


佐之助:(息を整えつつ)ふぅ……やっとこさ巻いたかな? 

    ったく、女の着物着ていてもやっぱり体力は男だよなぁ

    悔しいけど、あんだけ重たい衣装着てあれぐらい動けなきゃトップははれないってことだよな……ぜってぇ負けねぇ!

    (簪をまじまじと見て)にしても、綺麗な品だな。いつも付けてる簪よりもこっちのほうが絶対に映えると思うのに、もったいない。安心しろ? お前は俺がちゃんと使ってやるからな

  肇:(息を切らしつつ)そ、そこのお方!

佐之助:っ!


   佐之助、声がした方を振り向く。

   そこには、着物の下に長袖のシャツ、袴を着た肇が息を切らし立っていた。

  

  肇:あぁ! 申し訳ございません! 私は怪しいものではないのです!

佐之助:……

  肇:私は、和田肇と申します。とある先生の所で書生をさせていただいております。貴女が逃げるようにこの路地に入っていったのをたまたま見かけてしまって。何かあったのではと思い、急いで後を追ってまいりました!

佐之助:……

  肇:あの! よろしければこれを!

佐之助:え?


   肇、自分の羽織っていた羽織を佐之助に渡す。


  肇:私なんかの羽織で申し訳ないのですが、その、えっと……肌を隠すくらいは出来るかと

佐之助:え?

  肇:何があったのかとは聞きません。ただ、貴女のような綺麗なお方が着物を乱し、そこから白い陶器のような肌が見えてしまうのは、あまりにも……その……

佐之助:あ……

  肇:で、では! 失礼いたします!


   肇、踵を返し急いで去る。


佐之助:あ、あの! ……いっちまった……綺麗……陶器のような肌……俺、男だぜ?

佐之助:(M)それがあいつ。和田肇との出会いだった




●座組が所有する屋敷の縁側・夜

   夜中。縁側にて空の月を眺める佐之助。


佐之助:(ため息をつく)……俺は……


   静かな足音。


菊次郎:おうおう、しけた面してんな

佐之助:……菊次郎姐さん

菊次郎:おいおい、今は役に入ってねぇよ。ただの菊次郎だ

佐之助:……兄さん……

菊次郎:で?

佐之助:え?

菊次郎:どうしたんだよ、こんな時間に。いつもなら、肌の調子がって言って真っ先に寝るようなお前が夜更かしなんざ、珍しいこともあるもんだ

佐之助:……

菊次郎:……悩み事か?

佐之助:っ!

菊次郎:当たりか

佐之助:……

菊次郎:俺でよければ話ぐらい聞くぜ? まぁ、俺には話したくないかもだけどな

佐之助:……兄さんは……

菊次郎:ん?

佐之助:兄さんは、てるのことを好きだと自覚したのはいつですか

菊次郎:なっ! お前、悩みって言うのは、まさか!

佐之助:違います! 俺はてるのことは友人としか思ってません

菊次郎:そ、そうか……

佐之助:俺はてるが女だってこと、つい最近まで知りませんでした。だから恋愛対象でなんて考えて事ありません

菊次郎:お、おぅ……するってぇと、お前が悩んでいるのは

佐之助:(遮って)菊次郎兄さんは、てるが男だと分かっていても好きになっていましたか?

菊次郎:それは難しい話だな。俺はもともとあいつが女だと言うことを知っていた。おやっさんとの秘密だったんだ。だから、その質問に対する答えはだせねぇ

佐之助:……

菊次郎:好きな奴が出来たんだな?

佐之助:っ!

菊次郎:それで、悩んでいたと

佐之助:……でも、いけないことだと思ってます……

菊次郎:なぜ?

佐之助:この想いは、誰も幸せにしないから……


   佐之助、ギュッと袂を握る。


菊次郎:お前の想い人は、そのハンケチーフの人か?

佐之助:な、なんで!

菊次郎:そんなのお前を見てたらわかる。いつも手ぬぐいすら持たねぇお前が大事そうにハンケチーフを握ってるなんてな

佐之助:……

菊次郎:話してみろよ

佐之助:え?

菊次郎:今、ここには俺しかいない。さっきのお前の質問に答えを出すことは出来ないが、お前の話を聞くことは出来る

佐之助:……兄さん……

菊次郎:ほら、言ってみ?

佐之助:……言ってもいいのでしょうか……

菊次郎:誰も咎めはしない。人を好きになる気持ちは悪いもんじゃないだろう?

佐之助:……

菊次郎:まぁ、お前がその胸にしまっておきたいと思うんだったら別だけどな

佐之助:……これを貸してくれた人は……




●静かな公園・昼

   女性の装いで公園のベンチに座っている佐之助。膝には畳んだ肇の羽織。

   行き交う人をジッと見ている。


佐之助:あ、いた! すみません!

  肇:え?

佐之助:先日はありがとうございました!

  肇:あぁ! 貴女はあの時の! その後、大丈夫でしたか?

佐之助:え?

  肇:あの日、あそこで貴女をそのまま置き去りにするなんて判断をするべきではなかったのではないかと思っていたのです。きちんとお家の近くまでお送りしなくてはいけなかったのではないかと……

佐之助:いえ、大丈夫です。肇さんがお貸しくださったこの羽織のおかげで無事に家に帰ることが出来ました

  肇:あ……

佐之助:肇さん?

  肇:……名前

佐之助:名前?

  肇:覚えていてくださったのですね……

佐之助:もちろんです

  肇:……ありがとうございます

佐之助:仕事柄、お名前やお顔を覚えるのは得意なんです

  肇:あ、そ、そうですか……

佐之助:ん? どうかされましたか?

  肇:いえ……それで、今日はどうされたのですか?

佐之助:お借りしていた羽織をお返ししたくて

  肇:それでこの公園に?

佐之助:えぇ。知人に聞いてまわったら、書生さん方がよくいらっしゃる静かな公園があると教えていただいて。もしかしたら、肇さんもいらっしゃるかもしれないなと

  肇:それで待っていてくださったのですか? 私が本当に来るかどうかも分からないのに?

佐之助:えぇ。可能性があるのであれば、試さずにいるのはもったいないですから

  肇:素敵なお考えですね

佐之助:(照れくさそうに俯き)いっても、兄さんの受け売りなんですけどね

  肇:ですが、それを実行されたのは貴女です。素敵なことだと思いますよ

佐之助:あ、ありがとうございます


   少しの間。


  肇:(間に耐え切れずどちらからともなく)あ、あの!

佐之助:(間に耐え切れずどちらからともなく)あ、あの!

  肇:あ、す、すみません!

佐之助:こ、こちらこそ!

  肇:いえ! なんでしょうか?

佐之助:羽織を。本当にありがとうございました

  肇:いえ、貴女の助けになれたのであれば……

佐之助:あと、これ、よろしければ……


   佐之助、小さな紙袋を羽織と一緒に初めに渡す。


  肇:これは?

佐之助:美味しいと評判の焼き菓子です

  肇:え……

佐之助:私も詳しくないので知人から教えてもらっただけなのですが、よろしければ……

  肇:そんな、お礼をいただくようなことは

佐之助:いえ、本当にあの時助かりましたので……

  肇:ですが……

佐之助:受け取ってください

  肇:……では、ご一緒にいかがですか?

佐之助:え?

  肇:貴女さえよろしければ、もう少し奥の方に人通りもあまりない静かな場所があります。そこで、一緒に焼き菓子をいただきませんか?




●座組が所有する屋敷の縁側・夜

   ギュッとハンカチを握る佐之助。


菊次郎:お前……女の格好で羽織を返しに行ったのか?

佐之助:……はい……

菊次郎:なんでまた……

佐之助:最初はからかってやろうと思ったんです

菊次郎:おい

佐之助:「お前の助けたのは実は男だったんだぜ!」って驚かせてやろうって

菊次郎:……お前の性分がやっちまったってことだな

佐之助:……

菊次郎:(ため息をついて)なんですぐに正体を明かさなかったんだよ

佐之助:……嬉しかったんです……

菊次郎:嬉しかった?

佐之助:俺のこの姿が女性に見えたのが

菊次郎:おい……

佐之助:それに、俺なんかに好意を持ってくれたのが

菊次郎:……

佐之助:役者としての俺じゃなくて、ただの俺に向けてくれた好意が……

菊次郎:佐之助……

佐之助:だからって、騙していい事にはならない! それはわかってます!

菊次郎:……それで、気が付いたら惚れちまったと……

佐之助:……わからないんです……

菊次郎:わからない?

佐之助:……俺は捨てられた子だから……誰かに愛されたことがないから……

菊次郎:お前なぁ

佐之助:もちろん、座長や座組のみんながよくしてれてるのも、俺を受け入れてくれてるのもわかってます。でも、自信がないんです……

菊次郎:(ため息をつき)お前はいつまでたっても変わらねぇな。こんだけでかくなったのに、まだまだ子どものままだ

佐之助:……

菊次郎:本当に自分のことしか見えてねぇな

佐之助:っ!

菊次郎:言ったのか?

佐之助:え?

菊次郎:その書生さんには、お前の本当の姿を伝えたのか?

佐之助:……はい……




●静かな公園・昼

   公園の奥の方。ベンチに座り肇を待つ佐之助。


佐之助:……

  肇:(走って佐之助の元へ)すみません! お待たせしてしまって!

佐之助:いえ……

  肇:どうしたんですか? 改まってお話をなんて

佐之助:……

  肇:あの……

佐之助:ごめんなさい!

  肇:え?

佐之助:私……いや、俺、謝らないといけないんです……

  肇:え? 俺?

佐之助:俺、本当は、男なんです!

  肇:……え?

佐之助:ずっと騙していてすみませんでした……

  肇:え? えっと……どういうことですか? 何かの冗談ですか?

佐之助:違います!

  肇:だって、こんなにも美しい方が、そんな……

佐之助:……

  肇:もしかして、ご迷惑でしたか?

佐之助:え?

  肇:私がご迷惑をおかけしてしまったからそんな冗談を?

佐之助:違う!

  肇:わざわざ声まで作って、そんなこと……

佐之助:違うんだ!


   佐之助、肇の手を掴み己の胸へと押し付ける。


  肇:なっ! 何を!

佐之助:……ほら、女じゃないだろ?

  肇:……

佐之助:ここに女の証はない。お前と一緒なんだ

  肇:……




●座組が所有する屋敷の縁側・夜

   淡々と話す佐之助に開いた口が塞がらない菊次郎。


菊次郎:おまっ……なんちゅうことを……

佐之助:だって、信じてもらえなくて……

菊次郎:そりゃそうだろうよ

佐之助:……こうするしかないって……

菊次郎:だからって、直接的すぎるだろうが……

佐之助:……

菊次郎:それで?

佐之助:え?

菊次郎:散々やらかしたお前は結局どうしたいんだ?

佐之助:……

菊次郎:自分に好意を向けてくれた書生さんを騙しちまったことを後悔してるのは分かった。ならそれで、お前はどうしたい?

佐之助:どうしたい……

菊次郎:(優しく微笑んで)人間の縁ってのは不思議なもんさな。繋ごうと思っても繋げない、切りたいと思っても切れない。自分の思い通りになんてならない

佐之助:……

菊次郎:でも、だからと言って何かを望んじゃダメだってことはない

佐之助:え?

菊次郎:世間がどうとか、知ったこっちゃない。せっかく繋がった縁だ。本人たちの悔いのないように行動するのが一番だと俺は思う

佐之助:兄さん……

菊次郎:いいか、佐之助。人生は一度きりだ。どんなに後悔しようが、謳歌しようが一度きりなんだ。だったらその人生、己の思うがままに生きなけりゃ損だと思わないか?

佐之助:……はい……

菊次郎:そういえば……

佐之助:……

菊次郎:ここ最近、このくらいの時間によく屋敷の外で書生さんに会うな

佐之助:え……

菊次郎:酒を飲んで帰ってきたときとかによく見かけるんだよ

佐之助:……

菊次郎:スッとした佇まいの優しそうな書生さんでな

佐之助:っ!

菊次郎:これもなにかの縁、お導きってやつなのかもな

佐之助:兄さん……

菊次郎:行くなら静かに行けよ? 他の奴らに見つかるとめんどくせえからな

佐之助:……俺は……

菊次郎:いいんじゃねぇか? お前の思うがまま、己がままに行動すれば

佐之助:っ!


   佐之助、走って門へと向かう。


菊次郎:好きって思っちまったんだ。気が付いちまったその想いはお前にしか決着はつけられねぇんだよ




●座組が所有する屋敷の外・夜

   門の前に佇む肇。


  肇:(ため息をつき)……今更、ですよね……

佐之助:(息を切らして)肇さん!

  肇:っ! あ、貴方は……

佐之助:ごめんなさい!

  肇:え?

佐之助:貴方を騙してしまって、本当にごめんなさい! あの日も、何も言えずに帰ってしまってごめんなさい! 俺、俺……

  肇:(優しく)落ち着いてください

佐之助:あっ! ご、ごめんなさい! あ……

  肇:(優しく微笑んで)少しだけ歩きませんか?

佐之助:……はい……


   ゆっくりと歩きだす二人。


  肇:……

佐之助:……

  肇:あの……

佐之助:は、はい!

  肇:(苦笑して)あぁ、そんなに怖がらないでください。私は怒ってはいませんから

佐之助:え?

  肇:佐之助さん

佐之助:っ!

  肇:役者さんなんですね。私はこういうことに疎くて。友人に聞いたらすぐに貴方のお名前を教えてくれました

佐之助:……そう、ですか……

  肇:凄く人気の方だと。知らないなんてと怒られてしまいました

佐之助:そんな! そんなことないです……俺なんか、まだまだで……

  肇:常に向上心があるのは素敵なことですね

佐之助:っ……

  肇:佐之助さん?

佐之助:……また、そうやって俺のこと褒めてくれるんですね……

  肇:お嫌でしたか?

佐之助:そんなことありません!

  肇:ならよかった

佐之助:……俺、肇さんに褒めてもらえるほどいい人間じゃないんです……

  肇:何故ですか?

佐之助:だって、俺は貴方のことを騙したんです

  肇:……そうですね

佐之助:だからっ!

  肇:でも、美しいと思ってしまったんです

佐之助:え?

  肇:貴方のその姿も、声も、表情も……

佐之助:……

  肇:貴方から真実を告げられた日。正直、どうしていいのかわかりませんでした

佐之助:……

  肇:でも、貴方のことを怒る気にはなれなかった

佐之助;……え?

  肇:あの日、貴方に掴まれた手首の痛みと、私の手に残っている貴方の心臓の音。それが忘れられませんでした

佐之助:……

  肇:貴方が勇気を振り絞って私に真実を伝えてくれたのだとわかりました

佐之助:それは……

  肇:ねぇ、佐之助さん

佐之助:はい

  肇:私はこういうことに疎い人間です。それは友人からも言われるし、自覚もしています。でも、そんな私でもこれだけは間違っていないと確信をもって言えることがあるんです

佐之助:なんですか?

  肇:……って、言いつつもいざ言おうと思うと、怖いものですね……

佐之助:……

  肇:そんな目でみつめないでください

佐之助:え、あっ……ごめんなさい……

  肇:あぁ、すみません。貴方に謝罪をさせたいわけではないのに……

佐之助:……

  肇:佐之助さん、嫌であればきちんと断ってくださいね。私を騙してしまったからとかそういう負い目は抜きにしてください

佐之助:……はい……

  肇:佐之助さん、私は貴方のことをもっと知りたいと思っています

佐之助:え?

  肇:もちろん、一人の人間として

佐之助:あ……

  肇:そして、愛おしい人として

佐之助:(息をのむ)

  肇:自分と同じ性だと知った今でも、私は貴方のことが愛おしいと思ってしまう。貴方からその眼差しを向けられる度に嬉しいと思ってしまうのです

佐之助:……うそ……

  肇:嘘ではありません。この気持ちに嘘偽りなどありはしない

佐之助:だって、俺は……男で……

  肇:わかっています。それでもこの想いは変わらない

佐之助:……なんで……

  肇:私にもわかりません。でも、貴方のことを愛おしいと、愛したいと思ってしまったんです

佐之助:……

  肇:だから、嫌であれば断ってください。負い目とか責任なんて感じなくていい。そんなものは私のこの想いへの裏切りだと思ってください

佐之助:……肇さん……

  肇:はい

佐之助:……嫌であれば、突き飛ばしてください……

  肇:え?


   佐之助、ゆっくりと距離を縮め、肇に恐る恐るキスをする。


  肇:……

佐之助:……これが俺の答えです

  肇:……

佐之助:……肇さん?

  肇:貴方って人は……本当に……

佐之助:え?

  肇:佐之助さんも嫌だったら突き飛ばしてくださいね


   肇、そっと佐之助を抱きしめる。


佐之助:は、肇さん?

  肇:(クスリと笑って)自分からは大胆なのに……可愛い方ですね、本当に

佐之助:肇さん!

  肇:佐之助さん

佐之助:……はい……

  肇:好きです

佐之助:俺も……

   

   二人、ゆっくりと唇を重ねる。



―幕―





2023.05.23 HP投稿

お借りしている画像サイト様:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

Special Thanks:いいやまみつる様

紅く色づく季節

こちらは紅山楓のシナリオを投稿しております。 ご使用の際は、『シナリオの使用について』をお読みくださいませ。 どうぞ、よろしくお願いいたします!

0コメント

  • 1000 / 1000